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スペースがある状況下でのシュートデータ
2016.10.17

シュートの「精度」をデータで示すのはとても難しい。成功率(ゴール率)、枠内へのシュートといったデータはFootball LABでも取り扱っているが、それらはゴールまでの距離や角度が異なるだけで数値の傾向は変わってくる。チャンスビルディングポイント内にあるシュートポイントも細かいエリア別のシュートから判定したものだが、精度を示したものとは言い難い。プレー単位のデータだけをベースとすると表現に限界があるが、ここにトラッキングデータを加えるとまた新しいデータを生み出すことができる。その中からシュートを打った際にシュート選手の周りに相手選手がいる状況、いない状況でどれくらいデータが変わるのかを紹介しよう。

これらを紹介する上での基準を下記のように設けた。
  • シュート選手に対して半径2mを基準とする
  • ペナルティエリア(以下PA)内でのシュートのみ
  • PKはもちろんCK、FKなどアタッキングサードに選手が密集した一連のセットプレー攻撃から生まれたシュートは除く
  • 試合範囲は2016年J1開幕から2ndステージ11節までとする
  • 通常、シュート枠内(率)にはブロックされたシュートは含まないが、本コラムに関してはブロックされたものでも枠内に向かっていれば「枠内方向(率)」として計算する
まずはリーグ全体の傾向を見てみよう。PAを中央とサイドに分け、ワンタッチによるシュートとツータッチ以上からのシュートで図表を分けた。

ペナルティエリア中央でのシュート

PAの中央部分におけるデータはとても分かりやすい傾向となった。上図の中で最も良い数値を出したのは2m未満に相手がいない状況でツータッチ以上からのシュートをPA中央から放ったケースだ。4本につき3本は枠に飛び、22.29%がゴールとなっている。同状況でもワンタッチシュートの場合は枠内方向率が約15%下がる。これはクロスに対してギリギリ届いたようなシュートが含まれる影響もあるだろう。逆にこのエリアにおいて相手がいる状況でのワンタッチシュートはゴール率が15.1%、枠内方向率が54.01%まで下がっており、シュート選手に時間と空間を与えてしまうだけで大きく数値が変わることが分かる。

ペナルティエリアサイドでのシュート

一方、PA内でもサイド側からのシュートは中央とは異なる傾向となった。角度的に難しいものも多く、意表を突いたシュートや厳しい体勢でのシュートも多く含まれるため、確率は分散。その中でも相手がいる状況でのツータッチ以上シュート系のデータが良い値となったのは「ドリブル」が関連している。サイドからドリブルで切れ込みシュートを放つシーンはサッカーの試合において日常的に見る光景の一つであり、多くのサイドアタッカーがそれを武器としている。データ定義上ドリブルとは相手が必ず対峙している状況でカウントしており、このエリアでのドリブルであれば守備者はよりボール保持者に近いポジションを取るであろう。該当のシーンを見るとドリブルからわずかにマークを払いシュートに至った場面が多く、このデータの数値上昇に影響した。当然のことではあるが、より細かいデータ分析を行うのであれば「守備者がどの角度にいたか」も重要となってくる。

シュートパターンの違い

全体の傾向からもう一つ、シュートパターンを紹介しよう。Football LABでは各チームの得点・失点パターンを紹介しており、基本的な定義は同じものだ(参考リンク・リーグサマリー:得点パターン)。これをもとに本コラムの条件も加え、2m未満に相手がいる状況といない状況でのシュートパターン割合の差分をまとめたのが図のグラフとなる。

最もシュート選手にスペースが生まれにくいのはPA外クロスからのシュート。外からのクロスには短いとはいえ時間ができるので競り合う状況が生まれる。逆にPA内へ進入された後のクロスはスペースが生まれやすい傾向となっているが、深く進入された場合だとボールウオッチャーになり人の動きについていけないといったケースがある影響ではないだろうか。最もプラスの割合となったのは空いたスペースを狙ったスルーパスからのシュート。2番目には予測しづらくマークが難しいこぼれ球からのシュートとなった。

PA内にて2m未満に相手選手がいないケースでのシュートデータ

シュート選手に着目してみよう。PA内で相手がいない状況下でのシュートデータをまとめた。広島の選手が1位と3位にランクインしているが、チーム別で見たときに最も相手がいない状況でのシュートを放っているのが広島であり、ピーターウタカ、柴﨑晃誠が枠内方向率7割以上を記録している点からも分かるとおり、枠内方向率が最も高いのも広島であった。逆に数値が低い方で気になるのは鹿島勢。金崎夢生、土居聖真はシュート数こそ多いものの、枠内方向率は5割未満となっており、鹿島のチーム全体の枠内方向率も最下位となっている。ゴール率、枠内方向率ともにトップとなったのは柏のディエゴオリヴェイラ。彼の能力の高さがデータでも証明された。

PA内にて2m未満に相手選手がいないケースでのシュート対するセーブ

最後にGKのデータを取り上げよう。相手選手にスペースがある状況でシュートを打たれたケースのセーブをまとめた。GKとしては難しいシチュエーションであり、失点が多かったとしてもそれはチーム全体の責任といえるものが大半を占める。よって全体的にセーブ率が下がるのは致し方ないのだが、大宮の加藤順大のみ94.12%というセーブ率を記録した。該当シーンを振り返るとGK正面に飛んでいるものが多くキャッチによるセーブが多いのだが、大宮の場合、完全にフリーで打たれているシュートが多いわけではなくある程度守備枚数がそろった上での被シュートが多いため、DFのポジショニングによりシュートコースを制限できる。それに対して加藤がシュート前に自身のポジションの修正と準備をしっかりと行ってきたことで、高いセーブ率へとつながった。

多くの状況、条件によりシュートの難易度は異なり、今回紹介したデータはその中の一部にすぎないが、それでも上述のデータを頭に入れてシュートシーンを見てみれば、これまでとはまた違った楽しみ方が発見できるかもしれない。

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