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湘南vs神戸レビュー~イニエスタのプレー数が減った理由
2018.8.22

例年以上に選手が移籍し、W杯による中断前とは異なる様相を見せる明治安田生命J1リーグ。注目すべきチームは数多くあるが、その中でもバルセロナのトッププレーヤーであったイニエスタを擁するヴィッセル神戸は、Jリーグを熱心に追っていなかったサッカーファンからも刮目される存在となっており、それに応えるかのようにイニエスタは帰国後から2試合連続で素晴らしいゴールを記録した。イニエスタ以外にもJ2の岐阜で活躍した古橋亨梧や、G大阪で以前の輝きを失っていた長沢駿、徳島から大崎玲央、カタールのアフメドヤセルといった補強を行い、負傷からポドルスキが復帰した点も好材料だ。勢いに乗る中で7月に0-3と完敗を喫した相手に敵地でどのような試合を見せるか注目であったが、この試合では2-0で勝利を収め、雪辱を果たすことに成功した。

連続得点中だったイニエスタはこの試合ノーゴールに終わったが、先制となるゴールを演出。それでもスタメン出場後の試合においては最も少ないプレー数に終わった。これはチーム自体のボール支配時間の減少も大きく影響しているが、ボール支配時間に対してのイニエスタのプレーは、25.2秒につき1回というペースになっており、その時間も最長となっている。

神戸のボール支配とイニエスタのプレー数

こういった事象には多くの要因が考えられるが、今回取り上げるのは自陣からの配給とそれに対する守備側(湘南)のポジショニングだ。図のように自陣の赤いエリアから敵陣の青いエリアへのパス成功率は減少。特に15m以上の中長距離のパスが過去の試合よりも大きく下がっている。

神戸のエリアを越えたパス

ここからは同パスが最も成功していた磐田戦と今回の湘南戦を比べて見よう。赤いエリアで神戸の選手がパスを放った際、青いエリアにいた味方選手(湘南戦でいうと長沢を中心にポドルスキ、古橋、イニエスタ、三田らが状況によって該当)に対して守備側がどういったポジションを取っていたのかを数値化した。パスコースはパス出しと味方選手の動く先の線上において守備側の選手が存在するかどうかを表しているが、磐田戦よりも湘南戦の方がパスコースが少ないデータとなっている。さらに、青いエリアにいる選手に対して一番近い距離にいる守備側との距離を測ると、こちらも湘南の方が短い距離を記録し、前方に構えている選手に対して近い距離でチェックしていることが分かる。これに加え、赤いエリアからパスを送る側の選手に対しても湘南はボールホルダーに寄せているデータが出ており、これら3つの要素がパサーの判断を迷わせる要因となったのかもしれない。

同パス時の平均ポジションからも分かる通り、この試合においてイニエスタに最も近い距離に湘南の選手は齊藤となることが多かった。守備側が近い距離にいたこともあり、同じ状況下であってもイニエスタの動くスピードは磐田戦とは異なり、全体的に後方への移動割合が増加。イニエスタにとっては磐田戦よりも難しい試合になったのではないだろうか。

湘南にとってはうまくいった部分も多かった試合ではあったが、仮に89分間順調に進んでも1分の出来事が試合結果につながってしまうのがサッカーだ。神戸の先制点はポドルスキのボールキープからイニエスタへのパス。そこから浮き球で長沢の頭に当てて走り込んだ三田が最後にこじ開けた。ポドルスキのボールキープ中、イニエスタの近くにいた齊藤はイニエスタの位置を確認しており、イニエスタのパス時も2.4mまで寄せていたが、その状況下でも最適なボールが長沢に渡った。

先制点前のポジショニング

ポドルスキの試合別スプリント回数

後半にはポドルスキの突破から郷家が押し込んで追加点を挙げたが、ポドルスキと古橋の両翼も神戸の新しい武器の一つ。来日後は中央のポジションを担っていたポドルスキだが、イニエスタと共演後はサイドでプレーしている。欧州でプレーしていた頃は珍しくない光景であるが、日本では「サイドのポドルスキ」に対する研究材料がまだ少なく、2点目のシーンにおける湘南の守備も情報不足により判断に悩んだ可能性があるだろう。ポドルスキは試合中の移動距離がさほど多くない選手だが、この試合のスプリント回数は今季自己最多を記録し、加速回数(2.5m/ss以上)もW杯中断前にはなかった値を記録した。一方、逆サイドの古橋はこの試合こそ前半で交代となってしまったものの、3試合連続でスタメン出場を果たし多くのチャンスを演出している。

今後、神戸がアジアの「バルセロナ」となるためにどのような成長過程をたどるのか、目が離せない試合が続くだろう。

Football LAB
八反地 勇

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