TEAM SELECT

コラムColumns難易度が高くシュートにつながりやすい“クロス&ドリブル”とは。

HOME » 難易度が高くシュートにつながりやすい“クロス&ドリブル”とは
難易度が高くシュートにつながりやすい“クロス&ドリブル”とは
2012-05-14 17:00 RSS

前回、Chance Building Point(以下、CBP)はどうやって算出していて何を表しているのかをパスデータを基に紹介したが、今回はクロスとドリブルのデータについて展開する。

くどいようだが、「CBPとは」のページで紹介している通り、攻撃CBPの基本的な考え方は以下となる。

“フィールド上で発生するプレーを「プレー項目(パス、ドリブル、クロスなど)」と「エリア」で定義し、①そのプレーがどの程度シュートに結びつくか、②そのプレーがどの程度難しいか、という2つの視点に則った算出式を用いてスコア化”

また、今回取り上げる「クロスとドリブル」のプレー定義の概要は以下である。

「クロス」
・到達地点がペナルティエリア内、もしくはペナルティエリアを通過したものに限り、主にシュートを狙う意図のある選手に対して出したパス
・グラウンドの3分の1を越えたペナルティエリア両脇の延長線の外から出したパス、もしくは、ペナルティエリア内でもゴールエリアの縦のラインより外側から出したパス
・セットプレーを除く

「ドリブル」
・相手を抜こうとする、かわそうとするプレー
・相手がいない状態でボールを運ぶプレーはドリブルとしない


第1回と同様に、それぞれのプレーに対して「エリア区分」と「実データ」を紹介する。まずは「クロス」から。


図1

図1 <クロスのエリア区分>

表1 <2008~2011年 クロスCBP>

前回でも触れたが、パスを通すのが難しいエリアであればあるほど、あるいはシュートにつながる可能性が高いエリアでプレーを成功させるほど、高いCBPが付与される。

J1、J2ともに「2から3」、「5から4」のエリアが上位となっているが、この2つに共通して言えることは、『緩いボールは少ない』ということか。隣のエリアに入り込む味方に合わせる場合、相手DFにブロックされない角度とスピードが必要となり、エリアが近いためDFを越えるような浮き球を通すことは難しい。つまり、グラウンダーのボールか速いボールを選択することになるが、相手DFの数が多く警戒されている中でそれを味方に合わせるのも、味方が合わせるのも難しい。したがって、CBPが高くなるということだ。

また、J1は右サイドからのクロスに高いCBPが付与されており、J2は深い位置からのクロスにその傾向が出ている点も興味深い。

次に、ドリブルのデータを見てみよう。

図2 <ドリブルのエリア区分>

表2 <2008~2011年 ドリブルCBP>

相手を抜きにかかるプレーをドリブルとしているが、ゴール前や敵陣中央でそれを成功させる(相手を抜く)ことは難しい。しかし、そのエリアで相手を抜いた場合、50%を超える「シュート到達率」が示す通りシュートまで持ち込める可能性が高まるため、CBPが高くなっている。

CBPの高い順に表を作成したが、この表で興味深い点はドリブルの開始地点が中央か左サイドとなっていることだ。右利きの選手が左サイドにポジションを取った場合、多くの場合で相手DFは中への突破をさせないようケアするはずで、中へのドリブルは成功しづらくなる。逆に右利きの選手が右サイドにポジションを取った場合、相手DFが縦を切って中にいかせるような守備をするチームは少ないだろう。そうなれば攻撃側の選手は縦への突破を仕掛けてクロスを上げるようなプレーを選択することが多くなる。もちろん、これだけが要因ではないはずなので、この部分は具体的な数値データを使い、別の機会で分析出来ればと考えている。


第1回と第2回で攻撃CBPの軸となっている「パス」、「クロス」、「ドリブル」を紹介してきたが、次回はその逆、すなわち「守備」について紹介していこうと思う。


Text by 杉崎 健

2012-05-14 17:00 RSS
J STATS

Columns

Graphics