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コラムColumnsトラッキングから生まれる新データ 2. プレス及びプレッシング。

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トラッキングから生まれる新データ 2. プレス及びプレッシング
2021-09-18 12:00 RSS

前回「トラッキングから生まれる新データ 1. 裏抜け」にて攻撃の動きの1つである裏抜けのデータを紹介したが、今回は守備のアクションからプレス及びプレッシングについて紹介しよう。すでにFootball LABではトラッキングデータを持つJ1リーグのみではあるが、チームスタイル指標の「ハイプレス」にてプレスデータの一部を掲載しており(参考:湘南ベルマーレのハイプレス)、相手の攻撃に対してハイプレスを行った回数(指数)や守備成功率といったデータを掲載している。今回のコラムでは掲載しているデータとは別の角度から、どういった分析が可能になるのか細かく見ていこう。

記事にて触れる内容は以下の通りだ。
・「プレス」をデータとして定義する
・プレスを3つに分類
・プレスの回数と試行率の違い
・プレスの結果を分析するためのグループ化
・プレッシング後の守備成功の分類
・プレッシングの結果に関わるデータについて
A. 保持者とドロネー辺でつながっている選手に対するデータ
B. 保持チームのFW、2列目中央の選手に対するデータ
C. 最終ラインの高さと、プレス開始時の保持者との距離およびスピード
D. 保持チームのパススピードやボールキャリーによるライン突破
・各チームの選手データ傾向
※掲載データは今季J1リーグ8月末までの試合


「プレス」をデータとして定義する


表題の通りプレスデータは現在トラッキングデータから生成している。相手のプレー選手に対して一定以上のスピードと接近距離から判定しており、下図のサンプルアニメーションに表示された選手のうち、濃い赤で示した部分の選手の動きをプレスとしている。(※単に接近しているだけではプレスとは言えない動きもあるため、細かい条件のもとに判定している。)

図:ハイプレスのサンプルアニメーション

類似の呼称が存在するが、こちらの記事では1人による単体のアクションそのものをプレス、後述する複数人による連続したアクションをプレッシングとして紹介する。


プレスを3つに分類


プレスにはいくつかの種類の分け方が存在するが、最初にハイ、ミドル、ローの3種類について説明しよう。前述の通りハイプレスはすでにFootball LABに掲載しているが、同様にミドルプレス、ロープレスも算出しており、これらは下図のように選手配置時のポジションライン、プレー位置の関係から分割している。こういった種類分けは明確な共通ルールがないため分析をされる方によって異なる意見があるだろう。ひとまずこの記事においてはこう定義していると考えて頂きたい。

図:プレスの分類

図表:試合平均プレス数

プレスの種類が低くなるとともにサイドの比率が高くなる傾向にあるが、これはプレーの比率はサイドの方が高いことと、ここで言うプレスはある程度のスピードを持った「接近」がベースであるため、攻守の選手間が近くなりやすい中央エリアでは検知されづらい点が影響している。


この3種類のプレスの試合平均回数を算出すると図表のようになった。最終ライン近辺が対象となるロープレスは他のプレスに比べて低い値となっているのは、前述のサイド、中央の話と同様に選手間距離が元々狭いことが影響している。

プレスの回数と試行率の違い


プレスに限らず守備のアクションの「回数」データを利用する場合、相手がどれだけプレーしているかに大きく影響されるため、捉え方が難しい。回数が多ければその分プレスで負荷がかかっていると言えるが、その回数がプレスへの意識とイコールになるかと問われると、そうとは限らないだろう。極端な話、相手が低い位置でプレーをしなければハイプレスは発生しないからだ。その課題をクリアする一つの策として、相手のプレーに対してプレスを試行したかの割合を「プレスの試行率」として計算した。この考え方は現在のFootball LABのチームスタイル指標・ハイプレスのページ(参考:川崎Fのページ)でも一部を掲載している。(サイトに掲載しているデータは攻撃単位のハイプレス試行率となるため、この記事のデータとは一部異なる)

図:ハイプレス試行率1

図:ハイプレス試行率2

上図の左上表はハイプレスの試行率と試合平均回数を並べたものだ。ハイプレスの試合平均回数のトップは鳥栖だったが試行率では5位。逆に回数で中位であった横浜FMが試行率ではトップとなった。このように回数と試行率がイコールとなるケースは多くない。

続いて掲載しているチーム毎の図は、各エリアのリーグ全体のプレス試行率との差分を示したものだ。ハイプレス試行率が最も高い横浜FMはセンターサークル近辺とその奥の中央エリアでの試行率の高さが目立つ。ほか、高めのチームの中でも鳥栖はペナルティエリアやエリア脇において低い傾向にあり、深い位置にいるボール保持者は追わない傾向が見て取れる。プレス試行率が低いチームでも名古屋やFC東京のように相手のペナルティエリアでは強い傾向を示すチームもあり、それぞれのハイプレスへの意識の違いが表れている。

プレスの結果を分析するためのグループ化


次にプレス後の守備の結果について考えよう。

高い位置においてプレス1回でボールを奪えれば大きなチャンスとなるが、当然相手も回避するためのプレーを選択するため、そう簡単ではない。そのため、奪い切る目的以外にも相手のパスをサイドに誘導させるケースやロングボールを蹴らせるなど、相手の選択肢をできるだけ排除して攻撃を終わらせる目的も含まれる。また、相手のプレーに応じて順番にプレスを行うことも多く、1人のアクションのみがボール奪取に貢献したとも言えないものだ。よって、連続するプレスをグループ化し、多角的な分析を行うために複数の結末を用意しておく必要があるだろう。このプレスのグループ化をここでは「プレッシング」として表記する。

例えば最初に掲載したアニメーションのシーンは、プレスとしては4回計測されているがプレッシングとしては1回となる。この事例の場合、ボール奪取となった「プレス」は4番目(プレスチームから見て左サイドのプレス)のものだけだが、「プレッシング」として見れば4つのプレス全てがボール奪取につながったものの一つとして記録を残すことができる。

図:4つのプレスを1つのプレッシングに

現在、Football LABのチームスタイル・ハイプレスのページでは評価の1つとして「守備成功率」というデータを掲載しているが、これは最後のハイプレスから5秒未満で相手の攻撃が終わりプレスチーム側の攻撃に切り替わった割合を示している(アウトプレーにより攻撃権を得た場合はアウトまでの時間とする)。「5秒未満」という数値は一連のプレスの結果として扱う上で、どこまでがプレスの影響を受けたかという判断によって定義している。プレッシングの後に攻撃が切り替わった時間別の件数を見ると多くは0〜2秒に集中しており、5秒未満は約6割余りとなっている。この記事でも同様に上記定義を「守備成功」として利用するが、今回はより詳細な分析を行うために「失敗」も定義しておこう。何を失敗とするかは難しいところだが、守備チームにとって最も避けたい事象は失点をすることであり、失点の起因となる被シュートが一つの目安となる。ただ、自ゴールから遠い位置となるハイプレス開始のプレッシング(以降「ハイ・プレッシング」と表記)において、最後のプレスから5秒未満で被シュートに至るケースは少ないため、被シュートに至る可能性が高くなるディフェンシブサードでの被プレー成功もしくは同エリアでの被シュートを、今回のプレッシング分析における失敗とし、以下の図表では「DT被プレー」と表記する。

図:ハイ・プレッシングと5秒後の結果

上記の定義によりハイ・プレッシングの結果はどう分類されるのか、大まかな流れが上図となる。全体の約47.6%は大きな変化はなくそのまま相手がミドルサード以下で攻撃を行っているか、守備側のアウトプレーにより攻撃権が変わっていないケースとなり、守備成功は約43.7%。残りの約8.7%が自ゴールに迫られた状況となる。守備成功はエリアを6分割しているが、最も多かったのは3rd(ミドルサードの敵陣側。以下の図表ではMT敵陣)で、次いで4th(ミドルサードの自陣側。以下の図表ではMT自陣)のエリアとなった。守備成功のエリアはインプレーの場合はそのままボール奪取のエリア、アウトプレーの場合はスローインやフリーキックなどによる次の攻撃が開始されたエリアと捉えて頂きたい。


プレッシング後の守備成功の分類


守備成功の細かい内容について見ていこう。上図での傾向から守備成功のエリア分けはアタッキングサード(AT)、ディフェンシブサード(DT)に加え、MTの敵陣側(MT敵陣)、自陣側(MT自陣)の4種類とする。そのエリアに対し、相手の攻撃はどのプレーでロストもしくはアウトとなったのか、その割合を算出した。

図表:ハイ・プレッシングの守備成功の内訳

この記事の最初に掲載しているアニメーションの事例は最後のプレス選手がボールキープ状態の相手選手に対してタックルでボールを奪っており攻撃に転じやすいケースだが、そういった事例は多くなく、そう簡単ではない。最も多いのはプレッシング後の30m未満のリリース(多くはパス)をミドルサードで奪うケースであり、次いで30m以上のリリースとなっている。①~④のプレー軌跡はとあるチームの例だが、①30m未満リリースでは同サイドでの縦パスや中央からサイドへのパスが多く、それらのパスを奪う傾向にある。②や④はロングボールを蹴らせて相手の攻撃を終わらせたパターンと言えよう。

では今季J1のデータはどうなっているのか。ハイ・プレッシングの試合平均回数、守備成功率(全体・エリア別)、DT被プレー割合を下表にまとめた。

図表:ハイ・プレッシングのチームサマリー

プレッシングの数そのものはスタイルや相手の保持状況によるので評価ではなくベースとなる値だ。その中で守備成功率が高い数値となったのは横浜FM、札幌、川崎Fとなった。この3チームは先に紹介したハイプレス試行率のトップ3でもあり、ハイプレス意識も高く且つボールを奪えるチームと言える。その中でも川崎Fは敵陣での成功率が高く、彼らのスタイルがこのデータにも表れている。回数が少ない柏は守備成功率も下から3番目だが、低いエリアで相手にプレーを許す割合が少なく、必ずしも悪いとは言い切れない。名古屋やFC東京もDTでの被プレー率は先に紹介した札幌と川崎Fの間の数値となっており、ハイ・プレッシングによるリスクは低いと言える。「奪う」のが一番であるが、「やられない」という点も重要だ。

プレッシングの結果に関わるデータについて


どのような要因からこの結果につながったのか?細かい状況を精査するためにハイ・プレッシングにおけるハイプレス中のデータから以下の4項目を紹介しよう。

A. 保持者とドロネー辺でつながっている選手に対するデータ

B. 保持チームのFW、2列目中央の選手に対するデータ

C. 最終ラインの高さと、プレス開始時の保持者との距離およびスピード

D. 保持チームのパススピードやボールキャリーによるライン突破


A. 保持者とドロネー辺でつながっている選手に対するデータ


ボロノイ図、ドロネー図はトラッキングデータの台頭により選手配置の可視化や分析の土台としてサッカー界でも頻繁に使われるようになった。ここでは細かい説明は省略させて頂くが、1チームにおけるGK以外の選手の配置からドロネー図を生成すると下図のようになる。下図はこの記事に掲載しているアニメーションのうちボール保持チームの背番号17番から24番へパスを送るタイミングだ。今回使う「保持者とドロネー辺でつながっている選手」とはこのシーンで言うと17番と繋がっている選手となるため、少し太めの線で描画している24番、7番、5番、6番となる。

図:保持チームのドロネー辺

このようにドロネー辺でつながっている選手は、ボールを持つ選手としてはパスを送りやすい選手と言え、今季J1のパス成功のうち約79%がドロネー辺接続選手のパスとなっている。よって、保持チームの選択肢を奪うという意味においても守備側が準備もしくは警戒をしないといけない選手と言えよう。

このドロネー辺でつながっている選手に関わるデータから、以下の3つを抽出した。
(1) 対象選手に対して直近守備選手が3m未満にいるか
(2) 対象選手と保持者を結んだライン(パスコース)を塞いでいるか
(3) 対象選手に対して直近守備選手が3m以上離れている場合、接近しているか
※すべて相手のプレータイミングから算出

(1)(3)で利用している3mという基準はデータの出しやすさやイメージのしやすさから設定した数値だが、当然ながらプレー時における直近相手選手との距離は狭い方が成功率は下がる傾向にある(上図の参考データ)。もちろん詳細に突き詰める際は両者の移動方向やスピードも加味する必要があるが、前提の基礎情報として捉えて頂きたい。

(2)のパスコースの判定については弊社Youtubeチャンネルの動画「パスコースのデータからオフザボールの動きを評価」にて紹介しているが、こちらの記事では機械学習を利用していない簡易なものでパス選手と他の選手の動作方向地点との角度から計算した。上図の黒17のパス時のケースだと、赤11が黒5へのコースを塞いでいるという判定になる。

(3)の接近はプレスに近い定義と考えて頂いて問題ない。

対象選手に対して(1)(2)(3)のいずれかの条件に当てはまる割合を「チェック率」として算出。(1)を3m未満率、(2)をコースカット率、(3)を接近率として下表にまとめた。複数該当するケースもあるため(1)(2)(3)の合計値とチェック率は一致しない。「チェック無平均人数」とは(1)(2)(3)のどれにも当てはまらない選手の数であり、比較的フリーと言える選手の数だ。

図表:Aのデータ

見ての通り、高い位置で奪った場合においてチェック率は高くなり、チェック無しの選手数は少なくなっている。

ハイプレスの場合は主に相手の最終ラインの選手がプレスの対象となり、DFとドロネー辺でつながる選手は配置状況によるが3〜5人程度となる。チェック率は高ければ高い方が良いだろうが、相手のプレーを特定のポジションの選手やエリアに誘導させる場合は、あえて空ける必要もある。


B. 保持チームのFW、2列目中央の選手に対するデータ


次に参考にするのはハイプレス中において保持チームのFW、2列目中央の選手をチェックできているか、というデータになる。ゴールに近い位置にいる彼らに対してあっさりボールが渡るような状況を作るのは避けなければならない。データは先に紹介したAの内容からパスコースに関わるものを抜き、3m未満と接近からチェック率を導き出した。(パスコースを除外したのは、保持選手とFW、2列目中央の選手は距離があり且つスペースへのハイボールなども想定されるため)

図表:Bのデータ

相手の中央のアタッカーに対して近い位置に守備の選手がいる状況は当たり前なので、各データの差分は少なくなる。その中で最も高い数値となったのはディフェンシブサードでの守備成功時となった。ハイプレス中の相手のロングボールに対応するためには彼らとの距離を認識しておく必要があると言える。


C. 最終ラインの高さと、プレス開始時の保持者との距離およびスピード

A 、Bと異なりCは守備側の選手そのもののデータだ。ハイプレス中の最終ラインの高さとプレス選手自身のデータをまとめた。

図表:Cのデータ

ハイプレスは敵陣の広いエリアが対象となるため、最終ラインの位置も様々だ。ハーフウェーライン以上にラインを上げる必要はないため、深い位置でのハイプレス時は守備のブロックは縦に広くなる一方、ハーフウェーライン近辺でのプレーに対するハイプレスはコンパクトになる。いずれの場合も高い位置での守備成功は最終ラインも高い傾向となった。

残り2つのプレス選手のデータは、プレス開始時の保持者との距離と、プレスのスピードのデータだ。プレスの開始タイミングの判定は、保持選手への接近度合いが高まった地点となる。プレススピードのデータも併せて掲載しているが、距離が長いほどハイプレスのスピードは速くなる。そして速いハイプレスの場合はボール奪取の有無に関わらず低いエリアにボールが来る傾向となっている。


D. 保持チームのパススピードやボールキャリーによるライン突破


Dのデータは、ハイ・プレッシング中の相手のパスのスピードやラインを突破したボールキャリーのデータだ。保持チームによるプレーの問題や選択に関わるものなので守備側にはコントロールし切れないものだが、こういったデータもハイプレスが絡むプレッシングの成功有無に大きく関わる。

図表:Dのデータ

パススピードはパス距離が10m以上30m未満のものと、30m以上の2種類を掲載。10m未満に関してはスピードを必要としないようなパスもあるため除外した。どちらの距離範囲のパスも、パススピードが遅い方が高い位置で奪える傾向となった。ボール保持チームとしてはパススピードを意識する必要があり、逆に守備側としてはパススピードに問題がある相手であればしっかり奪いたいデータと言える。

ライン突破のボールキャリープレー比率とは、ハイ・プレッシング中のプレーのうち、相手のFW、MF、DFの3ラインを突破したボールキャリーがどれくらいあったかの割合である。ライン突破のボールキャリーとは上図右のような事例だ。選手と対峙するようなドリブル以外にエリアへ運んだプレーも対象となる。こういった後ろからのボールキャリーに対して守備側が引き寄せられた際、保持チームの他の選手にスペースが生まれる可能性が出てくるため効果的な場合がある。


以上4つのデータから、どこでボールを奪うかの目的を把握した上で、Aのように前をチェックするか、Bのように後ろをチェックするかの準備を明確にする必要があると言える。

上記のうちA,B,Cのデータについて、各チームのハイ・プレッシングにおけるハイプレス時のデータをリーグ平均との差分で抽出すると下表のようになった。

図表:各チームのABCのデータ

これらのデータから各チームの特徴が見えてくる。赤が目立つチームの中では札幌は対人への距離や接近に強い傾向があり、DTでの被プレー成功到達率が低い柏はBのチェック率でトップとなった。リーグ成績にて上位にいるチームのAのコースカット率が高い点は興味深い。横浜FMはどの数値も水準以上となっており、守備成功率の高さに繋がっている。

図:AとBのチェック率の分布

Aのチェック率を各チーム試合別で見ると約10〜15%の範囲に分布する。ドロネー辺でつながっている選手との関係性は、攻撃側と守備側の選手配置の噛み合わせも影響すると推測される。それはプレッシングに限る話ではないので今回の記事では触れないが、深く分析する上では避けて通れないポイントとなるだろう。

Bのチェック率はA以上に幅が大きく、約20〜30%の範囲に分布する。Bのデータは低い位置での守備成功に関わるデータだが、DTにおける被プレー成功との差分は微々たるものであり、今回の分析内容だけでは測れない小さな駆け引きが影響すると推測される。

各チームの選手データ傾向


最後に紹介するのはプレッシングに関わった選手のデータだ。これまで選手の守備データはオン・ザ・ボールにおけるタックル、インターセプト、クリアといったもののみであったが、トラッキングデータによってプレスのデータも取得できるようになった。さらに、上記で紹介したデータのような味方がプレスをしている際のデータも選手別に抽出可能だ。今回は選手個人のプレス試行率(保持者に最も近い選手となった場合にプレスを試行した割合)と上記のAとして紹介したドロネー辺でつながっている選手に対するチェック率を紹介しよう。

下図は縦軸がプレス試行率、横軸がAのチェック率となる。今季J1のうち守備機会の多かった選手の上位約半数を対象とした。

図:各チームの選手データ1

各チームの選手データ2

「守備」とは危険なエリアでのクリアやタックル、そしてチェイシングのようなわかりやすいアクションが目に留まりやすいが、相手選手に対して最適なポジションを取れるのも「守備ができる」と言っても良いのではないだろうか。例えばセルジサンペール(神戸)や田中聡(湘南)は、プレス試行率は40%余りだがチェック率は70%を超える数値となっている。前線の選手でも荒木遼太郎(鹿島)、加藤陸次樹(C大阪)、林大地(元鳥栖)が似たような傾向だ。こういった選手たちの貢献も今後データ化されていくだろう。

アタッカーに守備が要求されるようになった一方で攻撃において特殊なスキルを持つ選手にどこまで守備を意識させるのかという問題も付きまとう。例えば、川崎Fの家長昭博やG大阪の宇佐美貴史は、上図のグラフではチーム内で左下に位置しており、プレス試行率もチェック率も低い傾向となっているが、彼らが攻撃面において唯一無二のプレーヤーであることは言うまでもない。攻撃に特化した選手にも守備を意識させるのか、もしくは他の選手でカバーできるよう設計するのかという点も重要だ。


今回はプレッシング側(守備側)を中心にデータを紹介したが、攻撃と守備は表裏一体であり、上記で紹介したデータD(パススピード、ライン突破のボールキャリー)のようにボール保持側のプレーや動きも展開に大きく関わる。機会があれば、被プレッシング下におけるボールポゼッションのデータも紹介したい。

八反地 勇

2021-09-18 12:00 RSS
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