HOME » 「TOKYO2020」に滑り込め!U-24・J戦士の出場時間ランキングとその注目株
今夏に開催が予定される、自国でのオリンピック。特例的に「U-24」での参加が認められるこの大会に向け、その世代に該当する選手たちが昨シーズンは大きく躍動した。今回は、昨季のJ1・J2・J3それぞれにおいて、東京五輪世代に限定し、出場時間上位30名をピックアップした。
J1で出場時間上位の5人は、いずれも全34試合中30試合以上に先発。過密日程の中でもチームにとって代えの利かない主軸として出場を重ねた。古賀太陽、橋岡大樹、森島司などの「代表常連組」に負けじと、昨季は多くの新参選手も台頭。今大会においての「18枠」争いをさらに過熱させている。また、出場時間の関係でここには名前がないが、ルーキーイヤーで大爆発を見せてMVP候補やJ1アシスト王にまで上り詰めた風雲児・三笘薫の存在も忘れてはならないだろう。
昨季、明治大学から鳥栖に加入した森下はサイド攻撃を活性化させるピースとして躍動。昨季のドリブル回数は84回であり、これはDF登録の選手としては2位の畑大雅(68回)を引き離してリーグナンバーワンの数値だ。左右両足でのパワフルショットも存分に発揮し、ネットを揺らせばスタジアム中に響き渡る雄たけびで感情を爆発させる。堅実な守備を持ち味とする新天地・名古屋では、チームに一味加えるスパイスとしての活躍に期待が高まっている。
続いては湘南の石原。一昨季の福岡在籍時代を含めてもともとはサイドでの出場が続いていたが、昨季後半戦は3バックの中央を任された。169センチの彼に対するこの起用はしばしば驚きを呼んだが、キック精度の高さを生かして左右への散らし役として貢献。後方からのビルドアップを標ぼうする浮嶋サッカーにとって欠かせないピースに成長した。プレーの幅を大きく広げた今季は、名誉挽回を期すチームを支えるべく、捲土重来のパフォーマンスを披露したい。
C大阪アカデミー育ちの瀬古は昨季のベストヤングプレイヤー賞を獲得。マテイヨニッチとコンビを形成してリーグ屈指の鉄壁を築き上げた瀬古は、リーグ3位タイのクリア数(135回)を記録 (1位はMヨニッチの196回)。また、足下の技術の高さも生かしてビルドアップの出発点としての役目も果たした。今季はその相棒の移籍や監督の交代など、大きな転換が訪れたが、そうした状況下でも安定した活躍を見せられてこそ「18枠」への道が開けるだろう。
プロ4年目の沖は、昨季に鹿島の正守護神の座を見事に奪取。曽ヶ端準の後継者問題が長年唱えられていたチームにとって、明るい話題となった。昨季のセーブ率は17試合以上出場のGKの中で8位の67.9%と、1位のキムジンヒョンが記録する74.8%からは差をつけられたものの、東京五輪の守護神として、ひいてはこれからのA代表を支える存在としてもますます期待の高まる存在だ。開幕からのフル稼働が予想される今季は、安定感を高めて強力な攻撃陣を支えていきたい。
最後に取り上げるのはG大阪の山本だ。大卒ルーキーとして昨季途中から出番を増やした俊英は、ようやくチームを「背番号7」への依存から脱却させた。J1初先発となった14節の仙台戦でいきなり初ゴールを奪うと、そこからは全試合に出場。シーズン後半戦では、チーム1位となる958本のパス数を記録して中盤の心臓役を担い、1年目から出色のパフォーマンスを披露した。ひょうひょうとピッチを探検し、隙を見て突き刺すような縦パスを入れるさまは今季も必見だ。
J2、J3の出場記録トップ30はこの通りだ。岡村大八、加藤陸次樹、明本考浩、藤田譲瑠チマなどJ1への「個人昇格」を果たしたプレーヤーも多く名を連ねる一方、今季もJ2またはJ3でのプレーを選択した選手も決して少なくない。この表からは、特に注目の選手として岡村・上島拓巳・伊藤洋輝・本間至恩・唐山翔自の5名を取り上げる。
昨季、群馬にて全試合でフル出場を果たした岡村は、今季は札幌の一員としてJ1に挑む。130回のタックル数と、うち94回の奪取数はともにJ2でトップの数値を誇った。勇敢に前から封じに行くスタイルは、札幌の「ミシャスタイル」とどれほどマッチするか。同じく東京五輪世代である田中駿汰、柳貴博、高嶺朋樹らとともに最終ラインの定位置を争う形となるが、守備の激しさという武器を生かして一歩抜きんでたい。
その岡村と生年月日が10日違いの上島は、J2屈指のスイーパーとして福岡の昇格に貢献。191回のクリア数はリーグ3位の数値であり、42試合で29失点に抑えたチームの「堅守の象徴」として十二分の働きを示した。今季は柏に復帰し、こちらも自身初のJ1に挑むが(2018年に特別指定でJ1柏に登録されたが未出場)、控えに回るつもりはない。地元育ちの逸材は、粒ぞろいの守備戦線にて指揮官の信頼を勝ち取り、大会への切符につながるパフォーマンスを見せられるか。
続いては磐田の伊藤。その最大の特徴は、自慢の左足を武器にビルドアップのスイッチ役を担う点だ。昨季のパス数は3055本でリーグ3番目の数値だが、その方向を前方に限定した際の本数は1172本でリーグ2位にまで登る。また、ロングパス数は639本を記録し、これはフィールドプレーヤーでは2番目の李栄直(479本)に大差をつけて1位に躍り出る数値だ。今季も多くの「レーザービーム」を放ってJ2からアピールをかけたい。
新潟の至宝・本間は昨季に7ゴール7アシストを記録した期待の20歳。最大の武器にしてその代名詞は単独での突破力であり、昨季のドリブル数127回とその成功数66回はともにJ2でのトップを記録した。海外移籍やJ1クラブへの移籍もうわさされたが、「10番」は愛する地元でのさらなる挑戦を決意。不退転の覚悟を胸に、クラブとともにJ1へ歩みを進めるという思いで今季もピッチを切り裂く。
最後は、「パリ世代」ながらすでにJ3で才覚を現すストライカー・唐山を取り上げる。2019年9月の福島戦にて、当時16歳でJ最年少ハットトリックを記録して歴史に名を刻むと、そこから2シーズンをプレーしてJ3では合計33試合出場18得点をマークした(J1では7試合出場0得点、ルヴァンカップでは1試合出場2得点)。G大23は昨季いっぱいで活動停止となったが、J1のトップチームで戦う決意は十分。活躍次第では飛び級での「18枠」入りもあり得る、ポテンシャル抜群の大器だ。
いよいよ金曜日に開幕する2021シーズンのJリーグ。シーズン途中で自国開催での世界大会が予定されている今季、その主役となるのは誰か。これまでにないほど過熱した「18枠」争いにも、今年は目が離せない。
文:荒井 秀斗
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