HOME » 初のJ2昇格。SC相模原の2020シーズンを振り返る
DataStadiumアナリストに訊く vol.9
「DataStadiumアナリストに訊く」では、アナリストを交えたインタビュー形式のコラムで、サッカーの面白さや新たな気付き・視点を与えられるような連載を目指します。
今回はデータスタジアムのアナリスト、高橋 朋孝 さんに訊いてみました。
——今回は2020シーズンのJ3で2位となり、初のJ2昇格を決めたSC相模原を取り上げたいと思います。最後までもつれた昇格争いでしたが、相模原が逆転で昇格を決めました。彼らのシーズンを振り返ってもらってもよいでしょうか?
[高橋] まずは、相模原に関わる全ての皆さま、昇格おめでとうございます。
では、相模原の2020シーズンを振り返っていきましょう。一番の特徴は、勝点を落とさない、つまりは負けが少なかったことでしょう。
2020 J3 先制時の成績&被先制時の成績
実は、先制に成功した試合数だけを見ると、相模原は15試合でリーグ10位タイの数字でした。優勝した秋田が22試合、昇格を争った長野が19試合であることを考えれば、少なさが分かると思います。サッカーにおいて先制点を奪ったチームが勝利に大きく近付くのは想像に難くないと思いますが、「先制点を奪われても負けなかった」というのが昇格への決め手となったといえます。
長野との比較をしますが、長野が相手に先制を許したのは11試合(1勝1分9敗)で奪った勝点は4。一方の相模原は、相手に先制を許したのが14試合(2勝7分5敗)で勝点は13。結果的に相模原は19試合無敗という状態で昇格までたどり着きました。
——たしかに被先制時の成績は他の上位チームと比較しても非常に特徴的に見えます。では、相模原のストロングポイントについて教えてください。
[高橋] 3点挙げるとすれば、セットプレーから得点が取れること。アタッキングサードに入ってからのコンビネーション。そして、カウンターですね。
セットプレーといえば、相模原はロングスローを1つの武器にしていましたが、前線にボールを運べるからPKが取れたり、CKや良い位置でのFKが取れたり、良い位置でのスローインが取れるわけです。彼らの攻撃は、センターバックから前線にロングボールを送り、中盤の選手が拾ってポゼッションを開始することが多いのですが、ウイングバックの選手が相手のラインを押し下げたり、チームを前進させる役割を担っており、彼らにボールを当ててからの組み立てが目立ちます。ただ、アタッキングサードに入ってからは単純なクロスよりもショートパスでのコンビネーションを狙っている印象でした。連係でサイドを攻略し、逆サイドのウイングバックの選手がペナルティエリア内に入ってシュートに絡んでくるのは、特徴的だなと思いますね。
——なるほど。他に目立った選手を挙げるとすれば、どの選手になりますか?
[高橋] 能力が1枚抜けていると感じたのは、ホムロ 選手です。最終的なゴールゲッターとして得点ランク4位タイの13得点を挙げましたが、中盤に降りてきてチャンスメイクもできます。また、8月に藤本 淳吾選手が加入しましたが、やはり左足の精度が高いです。彼が下がってボールを受け、対角線にロングボールを蹴るシーンが増えました。例えば、最終節の今治戦では藤本選手→ホムロ選手への対角線のロングボールからゴールを決めましたよね。非常にシンプルですが、逆に彼らの能力の高さが際立ちました。
——ホムロ選手は現時点で新シーズンの去就が未発表ですが、契約更新となればJ2でどのような活躍をするのか注目ですね。では、続けて2021シーズンに向けての話をうかがいます。相模原にとって、初めてのJ2での戦いになりますね。
[高橋] J3と比べれば、当然ゲームレベルが上がります。より相手にボールを保持されることもあるでしょうし、自分たちのペースで展開できない時間帯も増えるはず。そんな状況が想定される中でどう主導権を握っていくか、が課題になるかもしれません。4チームが降格してしまう今季のレギュレーションは、初めてのJ2を戦う相模原にとって難しいものだと思いますが、昨季からどのような変化、進化が見られるのか楽しみです。
粘り強い戦いで第16節から19戦負けなしと、最終節までもつれた昇格争いを制して見事に昇格を決めた相模原。だが、2021年は険しい道のりが予想されている。目標を「勝点50」に設定し、J2定着への第一歩としたい今季。昨季のストロングポイントを継続させながらも、新たな武器を作れるか。補強した新加入選手たちと既存メンバーがどのような融合を見せるのか、約1ヵ月後のリーグ開幕が楽しみだ。
文:佐伯 渉
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