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2020ルヴァン杯決勝プレビュー 「太陽王」はオルンガと江坂だけではない! × 「花の東京」に高い確率で訪れるチャンスとは?
世界が一変した2020年。Jリーグも例外ではなく、さまざまな制約のなかで開催を続けてきた特別なシーズンも、ついにこの「ファイナル」の舞台で幕を閉じる。2020シーズンYBCルヴァンカップ決勝にコマを進めたのは柏レイソルとFC東京。決勝戦を前に、両チームの特徴とキープレーヤーをデータから読み解いていこう。
昇格組柏レイソル 「即タイトル」へ、守護神君臨。強力攻撃陣はファイナルでも果敢に仕掛ける
19年は序盤こそ思うような結果が出なかった時期を過ごしたものの、終わってみれば圧倒的な強さを誇って「魔境」J2で優勝を飾り、1年でのJ1復帰を果たした柏。今季は昨季から大きく戦術を変更せず、オルンガ×江坂のホットラインで相手を押し込む戦いぶりを見せた。11年の「昇格即優勝」という偉業を成し遂げた記憶は新しい中で今季のリーグ戦の優勝は達成されなかったものの、「昇格即タイトル」へあと一歩のところまで迫っている。中でも、10月に行われたルヴァンカップ準決勝は「守護神」キムスンギュの活躍が目覚ましく、セーブ数は驚きの10を記録。今季のリーグ戦における平均セーブ数が各チームとも約3であることと比較しても、彼の活躍なくしてファイナルへの道は開けなかったことは間違いない。ファイナルでも彼がどれだけゴールにカギを掛けられるかが、勝負の行方を担っている。
オルンガ×江坂だけではない 「太陽王」の両サイドで輝く注目選手
その中で今回のファイナルを前に、左右両サイドにスポットライトを当てる。1人目の注目選手として挙げたいのは、右サイドを主戦場とするクリスティアーノだ。
日本での戦いもすでに8季目となり、いまや他チームのサポーターにも言わずと知れた柏の「顔」的存在の選手だが、今季は負傷に悩まされ、長期離脱を余儀なくされた。それでも、10月上旬、開幕戦ぶりとなる戦列復帰を果たすと、ホームの神戸戦から12月に行われた大分戦までの11試合、加えて最終節の川崎F戦と、ほぼすべての試合で複数のシュート数を記録。今回の決勝の前哨戦となった30節FC東京との一戦では2ゴールを挙げ、攻撃の中心として完全復活を強く印象づけた。また、シュートや得点に限らず、アシストもリーグ後半戦だけで5つを記録し、復帰した20節から最終節までの「チーム内ラストパス数ランキング」でも江坂を超えて堂々の1位。彼の復帰以降、これまでのオルンガ・江坂から繰り出す攻撃パターンに強力なオプションが加わった形となったことは柏にとってかなり重要である。裏を返せば、FC東京の守備陣としてはオルンガと江坂にばかり気を取られていては、背番号9にことごとく守備網を切り裂かれ、リーグ戦と同様に痛い目を見ることとなるだろう。
一方、左の注目選手としては後方からチームを支える、「柏の太陽」こと古賀太陽を挙げたい。
負傷者が続出した今季の柏の守備陣だが、古賀は過密日程の中でほぼフル稼働。主に左サイドバックと左センターバックを務め、厳しい台所事情のチームを助ける大車輪の活躍で一気に欠かせない中心選手へと「すでに」上り詰めた。左右両足を使った攻撃参加がもともとの持ち味でもあったが、国際舞台などでさまざまな経験を積み、守備が課題とは言わせない選手に成長していることはデータにも表れている。例えば、フットボールラボで算出している「チャンスビルディングポイント(以下 CBP)」において、奪取CBPと守備CBPはチーム内で堂々の1位だ。リーグ全体を見ても、奪取CBPで全選手中8位、守備CBPで全選手中11位と、屈指の結果を残している。FC東京の強力アタッカー陣を止め、攻撃に転じるには彼の活躍が欠かせないだろう。同じく、左サイドで活躍を見せている瀬川とともに、彼らを中心として左サイドで起点を作ることができれば、同時にFC東京の右サイドのキープレーヤーである三田啓貴・中村帆高・中村拓海といった面々を守備に回させ、試合を優位に運べる展開を作れるだろう。決勝当日の活躍に期待を寄せたい。
徹底した低ポゼッションと切れ味鋭い攻撃 聖地国立で青赤軍団は躍動を見せるか
19年はリーグ戦中盤まで大躍進を続けたFC東京だったが、中心選手の負傷などに苦しみ、終盤の息切れが響いてシャーレを取り逃してしまった。開幕前にはレアンドロ、アダイウトンら強力な個を持ったストライカーを獲得するなどスカッドの充実が達成されたが、ACLとの両立に加え、守備の粗さが目立って取りこぼす試合も多く、思うように結果を残せずにリーグ戦を終えることとなった。それでも、準決勝では2020年のJリーグに旋風を巻き起こした川崎Fを相手に盤石の内容で白星を挙げ、「聖地国立」に歩みを進めている。かつて一部のリーグ戦で国立をホームスタジアムとして使用していたFC東京にとって、この舞台は他のチームよりもさらに思い入れのある場所だろう。また、国立で行われた04年のリーグカップ決勝戦は、古くからのサポーターの記憶に間違いなく残り続けているゲームであったと言えよう(前半に退場者を出しながらも、最後までゴールを守り抜いてPK戦の末優勝)。そんな彼らにとっても、「新国立」に足を踏み入れるのは今回が初めて。新たな歴史を作るべく、イレブンはピッチで結果を残せるか。
「分かりやすい」戦術 武器を隠さず、実戦で磨き続けている
今季のチーム特徴をデータで分析すると、戦いぶりはあまりにも特徴的だ。平均ポゼッション率はリーグで2番目に低く、パス数もリーグ最少と、最もボールを保持せず、パスをつながないチームと評しても過言ではないサッカーを披露。攻撃面ではロングカウンターの回数がリーグで2位、ショートカウンターの回数も6位と、カウンター色の強い戦いを続けている。
一方で、スプリント回数ではリーグ全体でトップと、ボールを持たないながらも切れ味鋭いプレーで結果を残してきた。リーグ戦で上位につけ、そしてカップ戦で決勝にコマを進めた要因の1つだろう。特に、永井謙佑はスプリント回数でチーム内1位、アダイウトンはチーム攻撃時の90分あたりのスプリント回数で同1位を記録しており、彼らが長谷川サッカーの核を担っていると言える。最前線で彼らがどれだけメリハリをつけて走り回れるかは、FC東京の命運をにぎる大きなカギだ。
セットプレーのチャンスが訪れる確率は非常に高い
フットボールの戦いにおいて、互いに自らの長所を生かし、相手の短所を狙うのは当然のことではあるが、その意味でFC東京視点からチームのストロングポイントを探ると、興味深いデータが見つかる。それは、セットプレーについての数字だ。今季のFC東京は敵陣でのFKの獲得回数がリーグで最も多く、セットプレーから10秒以内に挙げた得点数も川崎Fに次いでリーグ2位の16得点だ。そして反対に守備目線から、自陣でのファウル数、つまり相手に敵陣でのFKを「与えた」回数を見てみると、一番多いのは柏であることが分かる。また、柏は「相手のセットプレーから10秒以内に失点した数がリーグで最も多い。つまり、ただでさえセットプレーのチャンスが多いFC東京が、今回の決勝は比較的セットプレーを与えやすく、失点を喫しやすい相手を迎える、ということが言える。もちろん、合わせる場面でのアダイウトン、渡辺剛、森重真人といった面々の空中戦も大きな魅力だが、やはりカギを握るのは直接狙う場面で真価を発揮するレアンドロだろう。レアンドロはFKからのシュートにおいて、リーグで2番目に多い18本を放っている。また、ただ単に数を打っているだけではなく、枠内率は40%近い数字を記録している。これは、FKから10本以上シュートを打った選手の中では最も高い確率だ。決勝でも訪れるであろう、直接ゴールを脅かす位置からのFC東京サイドのFKに注目してみたい。
互いにこれまで2度の決勝はすべて優勝 年始に国立でカップを掲げるのはどちらとなるか
それぞれにとって3度目のリーグカップ決勝となる、今回のルヴァンカップファイナル。柏は決勝に進出した99年と13年で勝利を挙げており、FC東京は決勝に進出した04年と09年で勝利。
リーグカップの決勝戦では「負け知らずの両者」が1/4(月)14時35分から、国立で熱戦を繰り広げる。激動の2020シーズンの締めくくりに、有終の美を飾るのはどちらとなるか。
文:増田 椋斗
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