HOME » オルンガを支える陰の立役者 江坂任
一昨年以来、2年ぶりにJ1へ復帰した柏レイソル。昇格1年目ながらリーグ戦22試合を終え、8位と好調をキープしている。特に今シーズンは自慢の攻撃陣が火を吹いており、ここまでのチーム総得点は43と上から数えて3番目の数字を誇る。さらに、リーグ戦21試合出場21ゴールと今季の得点ランキングを独走しているオルンガは手がつけられない状況にある。
そして、そのオルンガを一列後ろから支えているのが江坂任だ。今季は第20節の横浜FC戦を除いたリーグ戦20試合に先発出場し、チーム内で2番目に多い8ゴールを挙げ、チーム内トップの6アシストも記録している。今回はそんな江坂の攻撃面に焦点をあてていきたい。
江坂は2018年に柏に加入し、以降は主力選手として活躍。トップからサイド、オフェンシブミッドフィルダーなど多くの攻撃的なポジションをこなす万能的な選手だ。高いボールコントロールの技術だけでなく、スペースを見つける能力も秀でている。相手ディフェンスの背後を狙った攻撃を多用する柏において、間延びした相手のスペースでプレーできる江坂の存在はとても大きい。今季のJ1開幕戦(コンサドーレ札幌戦)で決めた先制点は、まさにそれらの要素が詰まったゴールだろう。
まず注目すべきなのは、江坂のラストパスの本数にある。家長昭博(川崎フロンターレ)の41本より多い49本と、J1でNo.1の数字を誇っている(セットプレーを除く)。クラブのスタイルや出場試合数、時間によって差が出てくる部分ではあるが、それだけ江坂がチャンスに絡んでいる証拠と言えるだろう。
また、オルンガとの相性も抜群だ。オルンガに最もラストパスを送っているのは江坂で18本。2位以降の選手との差も大きく、オルンガが流れの中で受けた全ラストパスの26.5%を江坂が占めており、パスを受けてからのシュートシーンの1/4以上を直接演出していることになる(オルンガへのパス数、同アシスト数もチーム1位)。第8節の名古屋グランパス戦でもオルンガの動きを予測したピンポイントのロングパスでアシストを記録している。
シュートを打つ部位に偏りが少ないことも江坂の特徴だ。今季はリーグ戦21試合出場時点で右足と左足でのシュートを50本打っており、利き足の右足では22本、逆の左足では28本。シュート部位の偏り指数は1.27(1が左右均等で数字が大きいほど偏りがあることを表す)と他の選手と比較しても最も偏りが少ない。シュート数50本以上を記録している10選手の偏り指数の平均値は3.60であり、ここまで差が出ない選手は稀だ。
さらに驚くのは、江坂のJリーグ通算ゴールを部位別に見た時だ。計56ゴールのうち右足では19ゴール、左足では20ゴール、そして頭でも17ゴールと部位に関係なく得点を挙げている。
ただ、多才な江坂にも課題は残っている。ズバリ“枠内をとらえる力”だろう。今季はシュートを57本打っており(セットプレーを除く)、これはリーグ8位となっている。しかし、シュートの枠内率に関してはシュート数上位15選手の中で3番目に低い29.8%であり、多くのシュートがDFにブロックされたり、枠外となってしまっている。40%を上回る選手もいる中で、少し物足りない数字である。
この要因の一つとして考えられるのが、江坂はペナルティエリア外(PA外)からのシュートの比率が他の選手より高いというところである。いくら本数を打っても、ゴールから距離が遠いシュートであれば枠内シュートが増えづらいのは自然な考えだろう。
PA内とPA外に分けて枠内率を見てみると、PA外からは25本のシュートを放ち、枠内は5本で枠内率は20.0%。PA内からのシュートは32本で枠内が12本、枠内率は37.5%となっている。この数字はどちらもリーグ平均を下回っていた。
江坂は年々PA外からのシュートが多くなっており、今季の25本はリーグで5番目の多さでそこから2ゴールを決めている。遠目からでも積極的に狙う姿勢に“枠内をとらえる力”が付いてくれば、もっと怖い選手となれるだろう。
最後に江坂の各シーズン別のゴール数に注目したい。2015年にザスパクサツ群馬でプロデビューを飾って以降は毎年リーグ戦でゴールを記録。その群馬と2019年の柏の2シーズンでは二桁ゴールも達成している。しかし、どちらもJ2のカテゴリーであり、J1ではまだ一度も二桁に届いていない。だが、今季は残り10試合以上を残し、すでに8点と順調なペースでゴールを重ねている。このまま勢いを維持できれば、キャリア初のJ1二桁ゴールも達成できそうだ。
今季のリーグ戦はすでに折り返し地点を通過して2回戦目に入っているが、柏の攻撃力は衰え知らずだ。しかし、今後に対戦を控えているクラブはここまで目立っているオルンガに何かしらの対策をしてくるだろう。そんな時こそ、柏の背番号10にかかる重圧は大きいはずだ。残りのシーズンも失速することなく終えられるかは、江坂任にかかっているのかもしれない。
執筆:鬼澤 優作
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