多くの熱狂を生み出しているFIFAワールドカップも残るは4試合のみとなり、全て欧州のチームとなった。彼らはどのようなサッカーで勝ち進んできたのか、昨夏より当サイトにて公開しているチームスタイルデータを用いて紹介しよう。
チームスタイル指標の詳細についてはこちら。
FIFAワールドカップはリーグ戦に比べて試合数が少ないため、指数は用いず90分平均回数を使用した。下記のグラフにあるシュート率は、同攻撃内でシュートに至った割合を示し、円の大きさは同攻撃からのゴール数を表している。
「攻撃セットプレー」はアタッキングサードでのフリーキック、スローイン、コーナーキックから始まる攻撃を指しており、ほぼ直接シュートとなるペナルティキック(以下PK)は含んでいない。今大会はPKの増加によりセットプレーからのゴールが増加しているが、PKを除いた値同士で過去2大会と比べると大きな変化はない。それでもノックアウトによる戦いで多くのセットプレーからの得点が勝敗を決しており、残りの試合でもカギを握るだろう。
今大会のベスト4の中で最もセットプレーに特徴があるのがイングランドだ。獲得回数、シュート率ともに4チーム中トップであり、多くのゴールを記録。また、右側に示した被データからも分かるように相手に攻撃セットプレーを与えていない点も強さの一つと言える。優勝した2010年のスペイン、2014年のドイツも準々決勝までの試合で計算した同データにおいて最も被攻撃セットプレー数が少ないチームであった。彼らの場合、長い時間ボールを保持した影響もあるが、今年のイングランドがこれに続くのか注目だ。与えた回数は少ないものの被シュート率の高さを考えると「一発に泣く」という可能性も否定できない。また、前回大会ではベスト4チームは準々決勝までの戦いにおいて同攻撃下における失点が4チーム合計でも1のみだったが、今大会のベスト4はすでに全チームが失点を喫している。どのチームも油断は許されない。
「ショートカウンター」はハーフウェーライン近辺にあたるミドルサードからアタッキングサードに向けて速い攻撃を仕掛けたもの。スピードに乗ったカウンター攻撃は今大会のポイントの一つだ。回数では近い値となった4チームだがシュート率には大きな差があり、トップのベルギーと4位のイングランドで20%以上の差が開いた。また被データではイングランドが攻撃セットプレーと似た傾向になり、与えた回数が少なく被シュート率が高いチームとなっている。
「ロングカウンター」はショートカウンターよりも攻撃開始地点がさらに下がりディフェンシブサードから始まるもの。ショートカウンター以上にベルギーが他チームから離れ強い傾向を示し、彼らの特徴が表れている。日本もまさにこの攻撃により敗戦を喫した。一方で被データにおいてもベルギーだけ被シュート率が高くなっている。自身が得意としている攻撃を逆に突かれないためにも対処が必要だろう。
「敵陣ポゼッション」は相手陣内で20秒以上ボールを保持した攻撃。今大会のベスト4は過去2大会に比べ同攻撃のシュート率が大きく低下。2010年は28.8%だったが、2014年で20.1%、今大会は17.3%となった。このデータだけでも今大会も特徴の一つと言えよう。その4チームの中で回数が多くシュート率も高い傾向を示したのはフランスだ。被データの方では逆に双方ともに低い数値となり、この点において他のチームを上回っている。
「自陣ポゼッション」は名前の通り保持エリアが自陣の場合を示す。この場合は意図的な攻撃というより相手がブロックを敷き敵陣に進入しづらい状況が続いたケースが多いだろう。回数の差は大きく最も多いイングランドは最少のフランスの2倍となっている。シュート率のトップはそのフランスとなり、ベルギーがワーストとなった。自陣にてボールを回す展開になった際、どう攻撃に変化を加えるのかがこのシュート率アップのカギとなるだろう。
回数とシュート率を中心に紹介したが、最後に各スタイルからのセットプレー獲得率を紹介しよう。それぞれのスタイルの攻撃が終わった次のプレーが自チームのPKや攻撃セットプレーだった割合を示している。このデータで高い数値となったのはやはりイングランドで、多くの項目において4チーム中トップとなっている。ショートカウンター時のシュート率が低かった同チームだが、シュートへ持ち込めなくても直後に得意としているセットプレーを得られればマイナスにはならない。連続的に行われるサッカーの試合の中で、長所と短所がどのような交差を繰り広げフィールドにいる選手、監督がどう対処していくのか。栄冠はすぐそこに迫っている。
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Football LAB
2024-11-06 14:25
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