12年にプレーオフが導入されて以降、自動昇格できるのは上位2チームのみとなったが、16年までの5年間を振り返ると最低条件は「20勝以上10敗未満」という傾向が見られた。
ちなみに20勝9敗で残りはドローの場合、最終成績は42試合20勝13分け9敗
3×20+1×13=勝点73
12年以降、最も小さい勝点で自動昇格を果たしたのは、12年の湘南で勝点75だった。73ポイントでは昇格には心もとないため、ここから勝数を増やすか、負け数を減らすかして勝点を上積みする必要がある。現段階でこの条件を満たしているのは湘南と福岡のみ。また、徳島は9敗と負け数が一桁。残り試合を無敗で乗り切れば、2位以内に飛び込める(かもしれない)という公算だ。もちろん、あくまでも最低条件であり必須ではない。この数字を満たしながらもプレーオフに回った15年の福岡や16年の松本のような例も存在する。
今季は日本代表がワールドカップアジア最終予選の初戦で敗れつつも突破。また、プレーオフからJ1に昇格したC大阪は残留を確定させているなど、例外となる事象も生まれてもいる。現状の成績を踏まえると、上記の条件を満たせないながらも2位以内を確保する可能性は大いにあるだろう。
さらには少し気が早いが、プレーオフからの昇格という点に目を向けると、これまで5位でシーズンを終えたチームが勝ち抜いた例はなく、この点にも「初」の可能性が残されている。
そんな今季のJ2ではあるが、現状は湘南が一歩抜け出した様相を呈している。前節での昇格こそかなわなかったが、むしろ「初のホームでの昇格決定」の可能性が浮上してきた。
2位争いやプレーオフ圏内争いは、まだまだ節ごとに情勢が変動する混戦模様。ここでは2、3位争いを演じている九州の2チームをピックアップする。
●アビスパ福岡
「4-1」周期からの解放は?
02年以降、4年かけてJ1に上がっては1年でJ2へ戻るというループを三度繰り返してきた福岡だが、今季昇格することができれば「初」の1年でのJ1返り咲きとなる。
ウェリントンの強さに目が行きがちだが、ここまでの戦いは堅守が支えてきたといってもいい。得点数はリーグ中位だが、失点数は2番目に少なく、被シュート数は最も少ない。被クロスや被スルーパスの数も少なく、相手にチャンスを作らせていないことがうかがえる。空中戦にも強く、仮にクロスを上げられたとしても、はね返す力を備えているといえよう。
また、こぼれ球奪取数は1位、奪取率も53%で2位を記録しており、セカンドボールに対しての反応の良さも守備を助けているのだろう。
●V・ファーレン長崎
J1昇格に向けて3度目の挑戦
13年にJ2へと参入し、即プレーオフに進出する躍進を見せた。以降は、2年ごとに6位以内を確保し、今季は悲願の「J1昇格」が現実味を帯びてきている。
長崎も粘り強い守備を見せるチームである。上記の表からピックアップしたいのは、被シュート枠内率が圧倒的に低いということだろう。シュートブロック率も23%と1位を記録しており、球際に厳しく寄せる意識の高さがうかがえる。
時間の経過とともに運動量が落ちないのも特長の1つだ。15分ごとの被シュート枠内率を記そう。ゴール前での展開が増え、疲労が蓄積するゲームの終盤でも、長崎は枠内率が大きく上昇することはない。チームのベースとなっているハードワークにより、このような数字が導き出されている。
また、得点数47は福岡同様、飛び抜けて大きい数値とはいえず、守備力に加えて要所で点を取る勝負強さが発揮されているといえよう。例えば、ペナルティエリア進入数は少ないにもかかわらず、シュート数は中位の数を記録。特に、セットプレーを中心に効果的に得点を奪っている。全得点の6割以上をPKを含めたセットプレーが占めており(1位)、同じくセットプレーからの得点が多い松本と比較しても1割近くの差が。リーグ全体と比べると、その割合は顕著だ。
敵陣ペナルティエリア内での空中戦勝率は中位となっており、単純な勝率からは推し量れない強みを持っている。島田の正確な左足に加え、翁長のロングスローやサインプレーも織り込んでくるため、対応する側は手を焼くだろう。
来季のJ1を掛けての「バトルオブ九州」勃発か、あるいはそろっての昇格となるか。結果は最終節を待つことになりそうだ。
・関連ページ
湘南ベルマーレ シーズンサマリー
http://www.football-lab.jp/shon/
アビスパ福岡 シーズンサマリー
http://www.football-lab.jp/fuku/
V・ファーレン長崎 シーズンサマリー