HOME » サッカーの「攻撃」を分析するためにチェックすべき2つのデータとは?(2)
※本コラムは、サッカーの「攻撃」を分析するためにチェックすべき2つのデータとは?(1)の続きです。
サンフレッチェ広島と川崎フロンターレに共通する不調の原因
左上のエリアに分布しているのが、サンフレッチェ広島、川崎フロンターレ、ヴィッセル神戸、鹿島アントラーズ、北海道コンサドーレ札幌、柏レイソルです。パスはつながるし、相手陣内にボールは運べるのだけれど、なかなか得点が決まらない。そんな印象を受けるチームは、このエリアに分布されているチームです。
注目したいのは、サンフレッチェ広島と川崎フロンターレです。実は2チームとも、2016年シーズンから比較すると、シュート成功率が低くなっているチームなのです。
まず、サンフレッチェ広島ですが、チャンス構築率14.9%はリーグ1位です。実は2016年シーズンもチャンス構築率の1位は、サンフレッチェ広島でした。サンフレッチェ広島のサッカーを観た人は、丁寧にパスを交換しながら、確実に相手ゴール方向にボールを運んでいくプレーを思い浮かべるかもしれません。ところが、シュート成功率は4.2%とリーグ17位。シュートチャンスは作れているものの、得点につながるようなシュートチャンスを作れていない。あるいは、作ったシュートチャンスを活かしきれていないのかもしれない、といった仮説がデータから推測出来ます。2016年の得点王だった、ピーター・ウタカのFC東京への移籍も影響しているかもしれません。
川崎フロンターレのチャンス構築率は、サンフレッチェ広島、浦和レッズに次いで11.6%を記録しています。しかし、シュート成功率は9.6%(10位)と、チャンス構築率と比べると、順位が下がります。ちなみに、2016年シーズンの川崎フロンターレは、チャンス構築率は3位(13.3%)ですが、シュート成功率は2位(12.3%)を記録しています。2017年シーズンは、大久保嘉人がFC東京に移籍し、怪我人も多く、苦しい戦いを強いられています。シュート成功率から、確実に得点出来るゴールチャンスが作れていない事や、大久保が移籍した影響があるのではないかと推測出来ます。
攻撃出来るけどチャンスを作れない大宮アルディージャ
左下のエリアに分布しているのが、セレッソ大阪、ベガルタ仙台、アルビレックス新潟、大宮アルディージャです。相手陣内にボールを運べず、ボールを失う回数も多く、得点も決まらない。そんな印象を受けるチームが該当するエリアです。
注目したいのは、大宮アルディージャです。大宮アルディージャは、攻撃回数は1試合平均128.3回でリーグ7位ですが、チャンス構築率は7.2%で17位。シュートチャンスを作れていない事が分かります。そして、シュート成功率も2.7%で18位。作り出したシュートチャンスも、DFにマークされ、ゴールから距離が遠いといった、決めるのが難しいシュートチャンスで強引にシュートを打っているのではないかといった仮説が、データから推測出来ます。
チームの攻撃の良し悪しを判断できる「チャンス構築率」と「シュート成功率」
もし、自分がサポートしているチームや、注目しているチームの攻撃について詳しく知りたかったら、まず「チャンス構築率」と「シュート成功率」の数字を調べ、分布図を見て、他のチームと比較してみてください。そのチームが攻撃にどんな特徴をもっているチームか、より深く理解出来ます。
そして、「チャンス構築率」や「シュート成功率」の数値が、どんな要因によって成り立っているかを調べるために使用するデータが、パス、ドリブル、ボール支配率、ペナルティエリアへの進入回数といった、各プレーの詳細データです。チャンスを作り出している要因は何か。上手く言っていない要因は何かを知り、より具体的に問題点を把握し、解決策を考える手がかりを得る事が出来ます。
「シュート成功率」についても同様です。どのエリアからの、どのような、誰のシュート成功率が高いのか、逆にどのようなシュートの成功率が低いのか。具体的に調べ、「決定力不足」という言葉で片付けられがちな、得点が増えない問題点を把握し、解決策を考える手がかりを得る事が出来ます。
サッカーの攻撃について分析しようと考えたら、まず「チャンス構築率」と「シュート成功率」を調べてみてください。より深く「攻撃」を理解する手助けになるはずです。
【コラム執筆者プロフィール】
西原 雄一
2013年10月にブログ「nishi19 breaking news」を開設し、川崎フロンターレ、名古屋グランパス、サッカー日本代表の試合分析記事を執筆。2016年からは、日本スポーツアナリスト協会の広報活動をサポートしている。
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