HOME » 後半14分にサンフレッチェ広島は変身。ラスト15分でとどめを刺す
年間勝点の順位と２ｎｄステージで首位を走るサンフレッチェ広島は、リーグ最多の総得点を記録しており、総失点も横浜FMと並んでリーグで２番目に少ない。よって得失点差が大きく、年間では浦和、２ｎｄステージでは鹿島と勝ち点が並んでいるが、得失点差の影響で首位となっている。得点はどの時間帯でも平均的に記録しているが、後半30分以降は17ゴール。そしてさらにもう１つ、試合終盤の時間帯に特徴的なトラッキングデータがあった。
今季よりＪリーグ公式サイトで、トラッキングデータのうち総走行距離とスプリント数が公開されているが、広島は双方ともに少ない数値となっており、相手に走り負けていることも多い。それでも広島には彼ららしい特徴が、トラッキングデータに表れていた。
上図の左表は、総走行距離のうち自チームがポゼッション状況にある中で21km/h以上で走行した距離の割合を時間帯別に示したものだ。それぞれのチームに気になる傾向が出ているが、今回は広島にだけ触れたい。前半の広島は低い割合になっているが、後半から増え始め、後半30分以降の2.91%は僅差ながらリーグトップとなっている。（試合平均値でいえば、広島はこの時間帯で自チームポゼッション時に21km/h以上で627m走っている）
右表は左表を反対側から見たデータで、対戦相手側が走行距離に対して相手のポゼッション時に21km/h以上で走行した割合を示している。つまり、広島の欄は、広島と対戦したチームが広島ボールの際に走行した中でどれくらい21km/h以上で走ったか、という割合だ。こちらも後半から上昇し、ラスト15分では3.31%とリーグでも群を抜いて高い割合となった。同時間帯における試合平均値は724mでこちらもリーグトップ。広島と対戦するチームは、ゲーム終盤の最も厳しい時間帯にハイスピードでのランを求められていた。
なぜ上記のようなデータが出たのか。広島の試合をご覧になっている方は想像できるだろう。浅野拓磨という新たなジョーカーが生まれたからだ。
広島のレギュラーFWは今も佐藤寿人だが、フルタイム出場するケースは少ない。替わって登場するのが浅野だ。この交代は今季リーグ戦で25回行われており、交代の組み合わせランキングでもトップ。浅野の途中出場タイミングは広島がリードしているケースが多く、同点もしくは相手がリードしている場合は、佐藤と併用することもある。交代出場するタイミングの平均値は後半14分。前述のトラッキングデータに変化の兆しが見え始める時間だ。
では佐藤と浅野でどのような違いがあるのか、データを比較してみよう。
広島で最も多くゴールを決めているのはドウグラスで16点。次いで佐藤が11点。浅野が８点となっている。途中出場がほとんどなので浅野のゴールに先制点はなく、リード時の交代が多いため彼のゴールは４分の３が追加点となっている。
シュートを放ったケースをパターン別で見ると、佐藤は今季まだドリブルからのシュートがなく、通常のパスに加えてクロスやスルーパスからのシュートが主体となっている。逆に浅野はドリブルからのシュートが最も多い。シュートのワンタッチ比率を見ても、両者の違いは明確。例えるなら佐藤が「点」で合わせるタイプ、浅野は「線」でゴールを狙うストライカーだ。
最後に両者の走行距離を速度別に算出した。21km/h以上の割合は佐藤が5.1%、浅野は8.9%とここでも違いが表れている。佐藤は細かい動き直しや一瞬の飛び出しを得意とするため、この数値は伸びにくく、今後も特にこのデータを意識する必要はないだろう。逆に浅野は長い距離をハイスピードで走るため、この割合が伸びやすい。途中出場で体力も残っているため、相手DFにとっては脅威となる。
先制ゴール後に浅野を投入し、チームは第二形態へ変身。疲労が蓄積してきた相手に無慈悲の長距離スプリントから追加点を奪い、３ポイントを得るのが今の広島の必勝パターンだ。試合の終盤と同じように、待ち受けるリーグ終盤戦も勢いを持って勝利をもぎ取り、タイトルを手にしたい。
関連リンク
Ｊリーグ トラッキングデータ 走行距離
サンフレッチェ広島 2015シーズンサマリー
佐藤寿人 2015 選手データ
浅野拓磨 2015 選手データ
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