リーグタイトル獲得へ向け、ライバルとの争いが佳境に入った浦和。補強選手である武藤雄樹は前所属の仙台時代を上回るパフォーマンスを見せ、昨季ユースから昇格した関根貴大はレギュラーを奪取し、その能力を遺憾なく発揮している。その影響もあり、昨季と同じシステムをベースとしていながらも、新たなオプションを加えていったことで、シュートまで至る道筋は大きく変わった。アシストエリアをサイド3分割で比較すると、昨季は中央が大半を占めていたのに対し、今季は右サイドからのボールが目立つようになった。ゴールへの関与を見ると、先ほど紹介した武藤、関根が上位に名を連ね、攻撃陣が数プレー前からゴールに関わる兆候を見せている。
ボールの運び方がどう変わったのかを比較しよう。自陣でボールを奪ってからの10秒間と、そのさらに10秒後のプレーエリア、パス交換などをまとめた。
昨季と今季を比較すると、ボール奪取を含めたプレーの割合は全体的に左寄りから右寄りへ変わっている。そして、大きな変化が見られるのが、ボール奪取の10秒後から20秒後までのデータだ。昨季に比べて今季は相手陣内へより深く進攻しており、同攻撃時における右サイドの関根の平均プレー位置はトップの興梠慎三に近い高さとなった。パス交換数を見ても、昨季はほとんどがディフェンスラインを中心とした守備陣におけるパス交換となっていたが、今季は両サイドへのボールが増加。さらに2列目でのプレーが中心だった柏木陽介がボランチを担うことが増えたため、柏木のパス受け数が昨季から大きく増えていることも分かる。
先述のデータからも分かる通り、ボールを奪ってからシュートまでの平均時間は昨季より早まった。同攻撃時においてのサイド幅を算出したところ、昨季ボール奪取からシュートに至ったプレーで、サイド幅を50m以上使用した攻撃は68回で全体の31.6%。これは昨季のリーグ内で2番目に高い割合だったが、今季は20.7%となり、リーグ内で7番目の割合となった。サイドを広く使わずとも、シュートへ持ち込める傾向が表れている。
上記の傾向と同様にサイドチェンジの回数も今季は低下。その一方で、サイドチェンジを受けた時のプレー成功率と、サイドチェンジからの攻撃内でシュートへ至った割合は増加している。各サイドの突破が強力になったことで相手の守備を引き寄せやすくなり、逆サイドを効果的に突くことができるようになった。特に右から左サイドへのサイドチェンジ後のシュート割合は昨季から約5%以上増えており、右サイドの活性化が左サイド攻撃にもつながっていることが分かる。勝敗別で見ると、昨季はドローもしくは黒星となった試合でのサイドチェンジ数が多くなっており、攻撃に行き詰まった際に展開するケースが目立ったが、今季は逆の傾向となっている。どういった状況から逆サイドを利用するのか、浦和の試合を観戦する際に注目してみると面白いかもしれない。
リーグ戦はいよいよ終盤へ差し掛かる。昨季はこの時期から勝点を伸ばせずに失速してしまい、G大阪にタイトルを奪われたが、今季は多くの武器を手に年間優勝へラストスパートをかけたい。