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J3首位・レノファ山口の攻撃を解剖
2015-08-10 12:00 RSS

今年からJリーグに参入したレノファ山口が、シーズン序盤からJ3の首位を独走している。第24節終了時点で黒星は3つ(町田戦の2敗と長野戦)。引き分けは0で他の試合は全勝しており、取りこぼしが多い町田、長野との差は大きく広がっている。山口の武器は何と言っても攻撃力。チームの総得点は64で、リーグで2番目にゴールが多い相模原の2倍近い得点を奪っている。その得点力の裏にどのようなデータが隠れているのか、本コラムにて紹介していこう。
(以下、使用データは第24節[8/2]時点となります)

まずは、どのような選手がプレーしているのか簡単に紹介しよう。最終ラインは多少変更があったが、攻撃陣は固定されており、平均プレー位置で示すと右図のようになった。システムは4-1-4-1。福満が高いポジションを取るために4-2-3-1と表記されるケースもあるが、その場合でも庄司がアンカーとしてプレーしていることに変わりはない。彼らの名前を見ても分かる通り、知名度の高い選手は少なく、それだけに今年の快進撃はサプライズとなっている。


山口のポジション別スタメン回数(デプスチャート)

山口のボール支配率は54.5%で、今季のJ3の中で最も高い数値となっている。J1、J2で平均支配率54%以上を記録しているのは川崎F、浦和、柏、横浜FM(以上J1)、磐田、大宮、C大阪、千葉(以上J2)の計8チーム。リーグは異なるが、彼らを比較対象とし、ボールを奪ってからシュートに至った攻撃を「20秒以上かけてシュートに至った割合」と「10秒未満でシュートに至った割合」に分けて散布図にしたのが右側の図だ。現在のJリーグの中で最もポゼッションを意識している川崎Fは、そのイメージの通り20秒以上かけた攻撃が約半数、10秒未満のシュートの割合は僅差ながら最も少ない。その川崎Fと対極の位置にいるのが山口だ。この比較対象の中では20秒以上のケースが最も少なく、10秒未満の割合が最も多い傾向が表れた。

シュートまでの時間のデータについて、別の見方から探ってみよう。

D3rd(ディフェンシブサード)から始まった攻撃(ボール奪取、ゴールキック、スローインなど)からシュートに至った時間を算出した。攻撃としては最も時間がかかるケースである。山口のシュートまでの時間はJ3の中でも3番目に長い。しかしながらグラフの黒の部分、敵陣進入後からシュートまでの時間は町田に次いで2番目に短い数値となった。

下表に特徴的なデータを並べたが、山口はA3rd(アタッキングサード)におけるトラップからパスまでの平均時間が1.65秒と長野とともに早い数値を記録しており、1秒未満にパスを出す割合も高い。A3rdへのワンタッチパス成功率もJ3で唯一50%以上を記録しており、ゴールに近いエリアでスピーディーなプレーを行っていることが分かる。

 


続いて山口のパスに注目してみよう。図はシュートにつながった攻撃におけるパス交換をグラフ化したもの。庄司と小塚が関与しているものだけ黄色で表示している。対象となる全パスのうち、パスの出し手もしくは受け手に庄司か小塚の名前が入るケースは48.7%。約半分のパスに絡んでおり、彼らが山口のパスワークにおいて必要不可欠な存在であることが分かる。

J3において、D3rd・M3rdからA3rdへ向けたパスの本数を下表のようにランク化すると、庄司と小塚は2位と3位に入った。リーグトップ20の中で、成功率が最も高いのが庄司で2番目が小塚。対象パスから同攻撃内でシュートへ至った割合も、小塚、庄司が1位、2位となった。彼らがA3rdへパスを放てば、約3割の確率でシュートへ至っていることになる。山口の攻撃のギアチェンジは彼らの足で行われているのだ。

そして庄司、小塚のA3rdへのパスの受け位置を表したのが右の図だ。フォーメーション上は1トップに岸田、サイドに島屋、鳥養となるのだが、この受け位置を見ても分かる通り、それぞれの選手があらゆる位置でパスを受けている。このポジションチェンジと動き直しの連鎖は山口の攻撃の大きな特徴だ。

この攻撃によって相手の守備陣には混乱が生じ、山口の選手とボールの動きを捕らえるのに苦労しているのが現状だ。山口のA3rdでの平均プレー数は120.9でリーグ3位となっているが、これに対して相手の接近した守備プレー(被タックルや近距離での被ブロック)が少ない。シュートをGK以外がブロックする割合も最も低く、マークが追い付いていない状況となっているのではないだろうか。

あれだけの得点数をたたき出しながら、山口の総シュート数は町田に次いで2位となっている。それでもゴールに結び付けられる高い決定率と、40.9%というリーグ首位のシュート枠内率を記録しているのは、プレースピードの変化とポジションチェンジで相手の守備網をかいくぐり、フリーでシュートを放つ状況を生み出せているからだろう。

現在のJ3では、相手を研究し、長所を消すような意図を持って試合に臨むチームが少ないことも山口躍進の理由の1つかもしれない。まだタイトル争いもライセンス取得の問題でJ2に昇格できるかどうかも不明だが、もし昇格した場合、J3以上にタフな相手が待ち受けるJ2で、どのくらい彼らの攻撃が通用するのかは興味深いところだ。


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