HOME » 世界へ羽ばたく柴崎岳・その成長と課題
ブラジルワールドカップ後に代表招集されるようになり、先日のアジアカップUAE戦では同点ゴールを決め、多くのサッカーファンの記憶に「柴崎岳」の名前が刻まれたことだろう。若くしてその才能を認められ、高校時代は一年生の頃から名門・青森山田高の10番を背負い選手権に出場。二年生にして日本で数多くのタイトルを勝ち取った鹿島アントラーズへの加入が決まった。Jリーグでのプレーは5年目を迎えるが、どのような成長を見せたのか。また、どのような課題を抱えているのか。プレーとそのデータから振り返りたい。
グラフは各シーズンの出場時間、ゴール数、アシスト数を表したものだ。見ての通りで、3つとも年を重ねるに連れて増加している。ルーキーイヤーはスタメンより途中出場の試合の方が多かったが、翌年にはスタメンに定着。2013年以降はボランチに定着し、途中で交代するケースも減った。2012年は攻撃的なポジションでプレーすることもあったが、今ほどフィニッシュに絡むプレーは少なく1ゴール2アシスト。現在は3列目のポジションでありながらゴールに直結するプレーが増え、鹿島にとって欠かせない選手となった。
攻撃への関与が大きくなれば、それと比例してボールロスト(相手にボールが渡り攻撃が切り替わる)の数も増える。攻撃的な選手にロストが多いのは当たり前ではあるが、ロストとなったプレーのエリアや内容によっては大きな問題となる。柴崎のプレーを振り返ってみると、ここに彼の課題があるのではないかと疑い、調査した。図はエリア別のロストの割合と、ロストとなったプレーの割合だ。参考比較選手として、チームメイトであり同じポジションを担当する小笠原満男と、代表チームにおける先輩でありライバルとなる遠藤保仁のデータを載せた。
エリアの方は、ピッチを縦に6分割しそれぞれの割合を示した。数値表記のあるものは自陣でのロストの割合だ。ゴールに直結するプレーが増えた反面、自陣でのロスト割合も増えており、小笠原に比べ約8%多い。一番色が濃い箇所は最も自陣ゴールに近いエリアとなるが、ここでボールを失うと失点につながる可能性が高く危険だ。
もう1つのグラフはロストとなったプレーの割合。ロングパスやクロスの失敗に比べ、ショートパスやキープからボールを奪われた場合、相手がすぐボールコントロールできる状況となり、かつ味方の守備への切り替えも一瞬遅れるため、カウンターを食らいやすい。柴崎はそういったショートパス・キープからのロスト割合が小笠原、遠藤よりもはるかに多く、「危険な失い方」をしているのは明らかだ。
ボールを失ってしまった場合、いかに早く奪い返すかが重要となる。グラフは5秒未満に自分でボールを取り返した割合、味方が取り返した割合、ファウルで止めたケースと、相手がそのままシュートにつなげた割合をまとめたものだ。これに関してはボールを失った選手個人の問題だけではなくチームとしての問題でもあるが、2012年、2013年の柴崎はロスト後に被シュートに至るケースが極めて多かった。昨季、そのデータが減った要因の1つとして柴崎自身がボールを取り返す意識を持つようになったことが挙げられる。
また、小笠原、遠藤と比べて少ないのはファウルで止めた数だ。ファウルで止めるケースはさまざまで「良いファウル」と言えるものは少ないが、数的不利な状況でピンチを迎える前に素早くファウルで止めておくことは重要だ。柴崎はとてもクリーンなプレーヤーで、ボランチでかつフルマッチ出場しているにも関わらずファウル数が少ない選手ではあるものの、アジアや世界を相手に戦うことを視野に入れると、こういった「狡猾さ」が必要となる。イージーなロストを減らすことと、失った後の守備の判断力に向上が見られれば、日本代表のレギュラー定着はもちろん、世界を相手に戦える選手になるだろう。
始まったばかりの2015シーズンにどのような成長を見せてくれるのか。鹿島の20番からは今季も目が離せそうにない。
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