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コラムColumns選手新指標開発P③ ~支配率に影響のあるビルドアップ力~。

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選手新指標開発P③ ~支配率に影響のあるビルドアップ力~
2014-05-12 10:00 RSS

 前回のコラムでは、クロスチャンスとドリブルチャンスが選手のチャンス構築力に関係があるのと、チームのクロスチャンス力とドリブルチャンス力が必ずしもチームの得点パターンとリンケージしていないことを紹介してまいりました。今回もチャンスメイクに関係の深い指標を紹介していきたいと思います。

 右の表は、2013年J1全34節累計の選手データを用いて、アシスト数と関係の深い指標を抽出するために相関分析を行いました。アシストと最も相関係数が高い数字は「スルーパス」で0.7219、次いで高いのが「パスCBP」という結果となりました。よってこの2つのスコアを重視して「パスチャンス力」という指標をまずは取り上げてみたいと思います。

「PlayingStyle指標6:パスチャンス力」=e「有効スルーパス数」+f「パスCBP」

先ほどの相関分析結果を基に、アシストと最も相関係数が高い「有効スルーパス(シュートにつながったスルーパス数)」と「パスCBP」と「アシスト数」との偏相関係数を用いて、「パスチャンス力」を新たなチャンス系の指標として開発しました。以下がそのランキングです。

J1のナンバーワンは川崎Fの中村憲剛選手。アシスト数も7マークしており、川崎Fの攻撃の中心選手であることがあらためて確認できました。2位も川崎Fの大久保嘉人選手。前線でボールを待ってラストパスを送るプレイスタイルでもありますので、高得点をマークしているのでしょう。結果、4アシストをマークしております。3位はC大阪の柿谷曜一朗選手。ドリブルが持ち味の選手ですが、ラストパスでのチャンスメイクもできるプレーヤーだということが分かります。3選手は今季も注目です。

J2は今季から磐田に加入したポポ選手。強烈なシュートのみならず、チャンスメイクもできる選手だということが分かります。

以上、「クロスチャンス力」「ドリブルチャンス力」「パスチャンス力」の3つの指標をアシストと関係のあるチャンスメイク系の指標として紹介してまいりましたが、その3つの指標とアシストランキングを並べて確認してみたいと思います。

以下の表は、J1のアシストランキングと3つのチャンス系指標のランキングです。アシスト数1位の柏木陽介選手(浦和)は、どのチャンス系指標にも上位に入っておりませんが、ゴールに結び付く有効なパスを効率的に出している選手ということで、「持ってる選手」なのでしょう。

2位の田中順也選手(柏)も少ない出場数ながらパスチャンス力が12位に入っており、ラストパスを供給できるチャンスメイカーです。3位のレナト選手(川崎F)はドリブルチャンス1位、クロスチャンス7位でサイドからドリブルで仕掛けてクロスでチャンスを作る選手といえそうです。4位の長谷川アーリアジャスール選手(現・C大阪)、高萩洋次郎選手(広島)もラストパスでチャンスを作っている選手です。

その他の選手も、どのプレイスタイルでチャンスに貢献しているかが分かると思いますので、確認していただければと思います。同様にJ2のランキングも乗せておきます。

「PlayingStyle指標7:ビルドアップ力」=g「キープ総数」+h「20m以上のキープ数」

 前回のコラムでも紹介した通り、パスCBPはシュートに至った場合のプレーすべてに加点するルールとなっており、ボランチやサイドでビルドアップするタイミングでも加点されます。また、このスコアはボランチやサイドのプレーヤーのスコアが高くなる傾向にあり、ビルドアップ力の高い選手のスコアが高くなる傾向にあります。

 さらに、「パスCBP」+「ドリブルCBP」+「クロスCBP」を足したスコアを「攻撃CBP」として攻撃トータルの力として紹介しておりますが、このスコアの高い選手がビルドアップに貢献していると現在考えております。

 ただ、いろいろな要素が入ったスコアであるため、この攻撃CBPと相関の高い項目をピックアップしたところ、選手がボールを保持した回数「キープ総数」と「20m以上のキープ数」が相関係数として高く上がってきたため、その偏相関係数を用いて合成関数としたものを「ビルドアップ力」としました。

「ビルドアップ力」J1ナンバーワン、ナンバーツーは森崎和幸選手、千葉和彦選手と優勝した広島の選手が入っています。塩谷司選手も8位に入っており、チームとしてビルドアップ力が高いことが分かります。3位は現在広島にいる柏好文選手。昨季は甲府に所属しており、攻撃の起点として活躍していた選手です。

ほかにも浦和の選手が5人も入っており、ペトロヴィッチサッカーがビルドアップ力を求められるサッカーだということがわかります。

また、J2は現甲府のクリスティアーノ選手となっており、彼もまた甲府の中心選手となっています。

【ビルドアップ力はチーム支配率に影響】
最後に、ビルドアップ力のある選手が多いチームは本当にポゼッションができているかどうかを検証するために、2013年J1全試合のスタメン10人のビルドアップ力(20段階×10人の平均)をボール支配率と比較してみました。

これを見るとJ1では浦和が支配率ナンバーワンですが、ビルドアップ力は2位となっています。また2位の横浜Mもビルドアップ力は4位、3位の広島もビルドアップ力1位となっております。J2も似たような傾向となっており、ビルドアップ力の高い選手が多いチームほどボール支配率が高いといえそうです。

ハイライト映像を見るとゴールチャンスとシュートチャンスに目が行きがちですが、チャンスシーンを作るまでに大事なのはビルドアップの部分です。攻撃面での縁の下の力持ち的存在をPlayingStyle指標のビルドアップ力のスコアを見て確認することで、攻撃でチーム全体を押し上げる存在はどういった選手なのかをチェックできるかもしれません。選手ページで参考にしてみてください。

以上、3回目はパスチャンス力、ビルドアップ力の指標紹介でした。


<関連記事>
・選手新指標開発P① ~ゴール数と関係のある指標は?~
・選手新指標開発P② ~チャンスメイクと関係のある指標は?~
・選手新指標開発P④ 〜「敵陣空中戦力」を制する男「豊田陽平」と鳥栖の躍進〜

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