パス成功数ベスト5と敵陣でのパス成功数
当サイトにて算出しているチャンスビルディングポイント(以下CBP)のパスデータにおいて、川崎フロンターレはシーズン序盤より首位となっている。パスの成功数では広島、浦和に次いで3位となっているが、敵陣での成功数では群を抜いてトップ。難しいエリアで多くのパスをつないでいることによって、パスCBPは高い値を維持している。チームの順位は9/20時点で6位。序盤に勝ち点を稼げず苦しんだが、5月以降は白星を重ね下位グループを脱出し、上位にも顔を出せる位置にまで上り詰めた。今回のコラムは、川崎Fが攻守両面においてどういう変化が起きたのかを振り返ろうと思う。
比較をするために期間を3つに分けた。低迷していた開幕から4月まで、最も調子が良かった5月から7月中旬の前半戦終了まで、そして7月末の後半戦から現在までという区切りだ。最初に目についたのはやはり得点力の高さ。特に5月から前半戦終了までの9試合は平均2.8と高い数値を記録しており、9試合すべて2得点以上挙げている。これに対し他の期間は少なく見えてしまうが、それでもリーグ全体から見れば上位側。1勝しかできなかった序盤も4位の得点力であった。一方、失点に目を向けると、序盤は2.1失点で最下位タイという状況だったが、期間毎に減っており少しずつ改善されている。守備面は後ほど触れるとし、まず攻撃側を細かく見てみよう。
まず川崎Fのシュートはどういったプレーから生まれているのか?その割合はやはりショートパスが多いのだが、序盤は全体の3割にも満たない数であった。しかし、調子が上がってからは上昇しており、スルーパスの割合は2倍ほど増加。得意とする形でフィニッシュまで持ち込めるようになった。敵陣でのパス成功率も時間の経過とともに順調に上がっており、ワンタッチでのパスでも同様の現象が見られた。
シュートにつながった攻撃からプレー数、平均プレー位置、パス交換を抽出。最も変化が大きかったのはチームの中心である中村憲剛だろう。序盤はポジションも低かったため、パスの出し手としての仕事が多かったが、5月以降プレー位置が上がるとともに受け手としての数も増加。後半戦になってからはトップの大久保嘉人から最もボールを受けており、そのパスの平均距離も9.8mと短く、大久保に近いポジションを取っていることが分かる。各選手の距離感という視点で見ると最も成績が良かった5~7月は、山本真希から大久保までの縦のラインと、レナト、小林悠といったサイドプレーヤーが、いいバランスで配置されている。サイドの2人が後半戦にて負傷欠場してしまったのは大きな痛手となった。
下図にまとめた期間別の得点者の割合を見ても分かるように、成績が良かった時期は大久保を中心にレナト、小林など多くのフィニッシャーがいたが、後半戦に入ってからは大久保と中村に依存している状況だ。PKや直接FKを除いたセットプレーからのゴールがもう少しあれば、勝ち点をもう少し上積みできたのではないだろうか。
残り9試合、川崎Fの対戦相手には優勝を争うチームと残留を争うチームのそれぞれが残っており、厳しい戦いとなることは間違いない。2年目の「風間革命」はどのような結末を迎えるのか。最後まで目が離せない展開となるだろう。