Chance Building Point(以下、CBP)はどうやって算出していて、何を表しているのか。
第1回目のテーマとして、比較的イメージを持ちやすい「パス」のデータを基に、その算出方法や考え方を紹介していく。
「CBPとは」のページで紹介している通り、基本的な考え方は以下となる。
“フィールド上で発生するプレーを「プレー項目(パス、ドリブル、クロスなど)」と「エリア」で定義し、①そのプレーがどの程度シュートに結びつくか、②そのプレーがどの程度難しいか、という2つの視点に則った算出式を用いてスコア化”
また、今回取り上げる「パス」は以下のように定義している。
・味方にボールをつなぐことを意図したプレー
・偶然的に味方にボールがつながったプレーはパスとしない
・クロス、セットプレーを除く
上記にあてはまるプレーをパスと定義し、それを図1のようにエリアごとに算出する。どのエリアで出し、どのエリアに到達したのかを分類するのである。
<図1 パスCBPのエリア区分>
この分類により、
「どのエリアからどのエリアに出されたパスが最もシュートにつながりやすいのか」
「どのエリアからどのエリアに出されたパスが最も難しいのか」
などを測ることができる。
パスCBPは、この2つの考え方をベースに、よりシュートにつながりやすい(シュート到達率が高い)エリアへ通したパスや、より難しい(成功率が低い)エリアに通したパスを高く評価し、その逆は相対的に評価を低くする算出式となっている。
実データとして、2008年から2011年までの4年分を合算し、シュート到達率別に算出したデータを紹介する(表1)。
<表1 2008~2011年 シュート到達率>
J1とJ2でカテゴリーを分けて算出したが、そのエリアに違いが表れた。J1で最もシュートにつながりやすいエリアは「4」から「10」に向けられたパス。J2では「5」から「10」に向けられたパスとなった(エリアは図1を参照)。
そのシュート到達率に加え、難易度を表すパス成功率とを組み合わせ、独自のロジックで導き出した指標数値がパスCBP欄に表示したデータとなる。シュート到達率が高いだけではパスCBPが高くなっていないことが分かる。
データから見る特徴としては、前方に向けられたパスよりも、後方に戻すパスの方がシュートにつながりやすい結果が表れたことだ。
最後に、パスCBPの高い順に算出した表を見ていただきたい(表2)。
<表2 2008~2011年 パスCBP>
相手ゴール前でのパスは難しいため成功率は20~30パーセント前後だが、それでもパスが通ればシュートにつながりやすく、シュート到達率も20~30パーセント前後となっている。
パスを通すのが難しいエリアでありながらもシュートにつながる可能性のあるエリアであるため、そこでパスを通せば高いパスCBPが付与されるということだ。
このパスCBPは1本のパスに対して定められるポイントであり、同エリアで3本のパスを通したとすればパスCBPは3倍付与される。そうしてパス1本1本に対してポイントを付与していき、合算した数値がチーム(または選手)のポイントとなるのである。
総括すれば、パスのCBPとは、より「パスを通す上手さ」を測り、より「チームのシュートチャンスを構築できたかどうか」を示す指標であると言える。
今回はそれぞれ上位5エリアを紹介したが、すべてのエリアに対してパスCBPを算出しているため、分析の手法は様々。チームや選手の特徴を分析したり、将来的にはJリーグと他のカテゴリーとを比較したりすることも可能となるかもしれない。
パス以外のプレーに対しても算出方法や考え方は同じであり、異なる部分はエリアの区分くらい。各プレーの特性を考慮して算出した各CBPの値を基に、新しい視点や新しい分析手法を見出してもらえれば幸いである。
Text by 杉崎 健