コンフェデはホームブラジルが圧倒的な力で優勝。日本も今まで積み上げてきたものを発揮し通用する部分も見えたが、逆に世界との差をはっきりと感じた大会でもあった。特に課題として浮き彫りになったものの一つが選手層の薄さ。控え選手も海外移籍選手が占める中、Jリーグにいる選手もしっかりアピールすれば、次のブラジルワールドカップに選出される選手も出てくるかもしれない。
今回のコラムでは、予選4チームに関する指標分析から現状の日本代表の課題を抽出し、その課題を解決出来そうなJリーグの選手をピックアップすることで、再開後のJリーグ注目選手をチェックしていきたい。
【日本の課題①】自陣ペナルティエリア内での空中戦
まず一つ目のデータは、4チームにおける自陣空中戦の数と勝率、自陣ペナルティエリア(PA)内の空中戦の数と勝率をまとめたものだ。これを見ると、自陣での空中戦の勝率は他のチームと差がないものの、自陣PA内の勝率が12.5%と他のチームに比べて圧倒的に低いことが確認できる。特にDF陣に限って見ると、自陣PA内の空中戦で勝った選手が誰もいなかった。
イタリア戦の1失点目、メキシコ戦の2失点はいずれも自陣PA内での空中戦に負けて失点したもの。特にセットプレイの守備は大きな課題となってくるだろう。守備面は他にも課題は多いが、ペナルティエリア内で勝てる選手を補うことはポイントとなるだろう。
【注目選手】水本(広島)、近藤(柏)、青山(甲府)
そこで、2013年のJ1選手の自陣PA内勝率ランキングを見てみると、最も勝率が高いのは広島の水本。ザックジャパンには何度も選出されているが、サブメンバーとして定着している栗原(横浜FM)よりも約20%高く、もう一度代表で見てみたい。
続いて、2位につけたのは柏の近藤。近藤は自陣内の勝率もナンバーワンで、2012年に一度代表に選出されているが、ACLやJの舞台でアピールをしてほしい。3位は守備CBPも高い甲府の青山。
ディフェンダーのイージーミスから失点した試合が多かった今回の代表を考えると落ち着いて対応できるベテランの存在として中澤(横浜FM)も気になるところ。直前にベテランの選出の可能性は低いかもしれないが、南アフリカでの彼の経験は少なくとも同じチームの栗原に伝授してもらいたいところだ。
【日本の課題②】前線から守備が出来、ゲームメークが出来るFW
続いては予選にFWとして出場選手における「ゴール/シュート/シュート決定率」「パス/パス成功率」「ボール奪取数」を見てみた。これを見ると、最もボールを奪ったのは岡崎で3試合で9回あった。岡崎は前線からの守備が目立ち、奪ってからいいチャンスを作った。得点もチーム最多の2得点で今大会のMVPといってもいいだろう。パス成功率も73.7%と他の選手と同水準をマークしている。
前田もボール奪取数は少ないものの、献身的な守備でチームに貢献した。前田の課題は決定力だが、パス成功率も70%を超えた。
一方他のチームの選手を見ると、フッキ・フレッジ・ネイマールの3選手のボール奪取数が多く、パス成功率も75%を超えている。今大会のブラジルは守備をしっかりやるチームで、その結果がスコアに表れている。必ずしも日本はブラジルをまねる必要はないが、岡崎・前田に続く献身的な守備ができ、ゲームメークに絡めるFWは今後ピックアップすべき人材になってくるのではないか。
【注目選手】
大久保(川崎)、原口(浦和)、柿谷(C大阪)、小林(川崎)、大迫(鹿島)
FWの選手で攻撃CBPの高いトップ20を見て見ると、大久保(川崎)、原口(浦和)、柿谷(C大阪)の3選手が上位となった。大久保は川崎に移籍後チャンスも作れて点も取れる選手として活躍。原口も厳しいレギュラー争いの中、持ち前のドリブルを生かしてリーグNo1の得点力を支える存在としてチームに貢献。C大阪の柿谷はチャンスメークだけでなく決定力も高く、現在リーグ得点王。点のとれるFWとして代表で見てみたい選手だ。
ただ、チームでの役割もあるとは思うが、守備CBPが高い訳ではなくボール奪取という面においては違うキャラクターかもしれない。
一方攻撃CBP上位でさらに守備CBPも高い選手として注目したいのが小林と大迫。小林は今年はサイドプレイヤーとして起用され、チャンスメークもできて点も取れる選手だが、献身的に守備もできる選手だ。鹿島の大迫もダヴィとのコンビを組み、前線からしっかりと守備をしてくれる選手だ。特に大迫は前田と役割が近く、今後注目していきたい選手だ。
【日本の課題③】遠藤・長谷部以外の攻撃のスイッチャー
最後は、4チームにおけるミドルサード&アタッキングサードからの縦パス数と縦パス成功率を見たものだ。まずミドルエリアでは66.9%と他のチームと遜色がない。ただアタッキングサードで見ると日本は59.5%とイタリア、メキシコと差はないもののブラジルは68.6%と10%も差がある。ここが世界トップレベルとの差なのかもしれない。
日本代表の個人単位でのアタッキングサードでの縦パス成功率を見ると、長谷部が83.3%、遠藤は64.3%とチーム内で平均以上だが、他の選手は他のプレイヤーは60%を切っている。細貝はミドルサードでのスコアは70%を超えているが、アタッキングサードではトライ回数がない状況だ。
レギュラーは世界レベルに近づいていると言えるが、それ以外でアタッキングサードで攻撃のスイッチを入れられるボランチは補強ポイントかもしれない。
【注目選手】阿部(浦和)、森崎和(広島)、山本(川崎F)
そこで、攻撃CBP上位20選手のMFから、アタッキングサードの縦パス成功率に関するランキングを見てみると、阿部が76.9%とトップとなった。ミドルサードでも2位となっており、今年の浦和の活躍次第ではワールドカップ経験者としてベテラン選出もあるかもしれない。去年タイトルを取った森崎(広島)は、コンスタントにレギュラーで活躍しているが、ACL敗退した今はリーグに集中して上位争いの原動力になれば、初の代表選出もあるかもしれない。最後は山本(川崎F)。ユース世代は代表の常連だったが、いまだにA代表の選出はないものの、札幌から移籍した今年はコンスタントに試合に出場している。運動量も豊富で献身的なプレイをしてくれるので、注目していきたい選手だ。
以上、代表のカードから振り返ってみたが、各ポジションで前回のワールドカップで代表レギュラーだった選手と若手が上位に上がってくる。今の海外組は若手~中堅が多いので、最終選考に向けてベテランの力を借りるのか、残り1年で若手の新生を選ぶのか、来期のワールドカップを目指してJリーグ選手の活躍を期待するという視点で再開後のJ1に注目していきたい。