スターティングメンバーとフォーメーション
この試合におけるシュート数は日本が22本に対してイタリアが14本で、ボール支配率は日本が56.4%。このことからも、ザックジャパンがボールを保持しゴールに迫っていたことが読み取れるだろう。では、何がこれを呼び込んだのだろうか。
イタリアと戦う上でどのチームも警戒するのが、ショートパスでリズムを作り、正確なロングフィードでチャンスを演出する中盤のピルロだ。彼をどのように封じるかがポイントであった中で、日本が取った策は2列目の岡崎や本田らが厳しくプレスに行くこと。多少でも彼のリズムを狂わすことが、勝利への第一歩であるという思惑があったに違いない。この狙いは功を奏し、ピルロのパスの成功率はメキシコ戦と比べて10%近く低下。中でも、前方向へのパスは本数、成功率ともに下がった。さらに、トラップが37回中7回失敗と、日本の素早い寄せでボールを失う場面は何度か見られるなど、「ピルロを封じる」というタスクは見事に遂行できていたといえる。
司令塔のリズムを狂わせ、良い位置でボール奪取することに成功していた日本。だが、ボールを奪ってもすぐにボールを失っていては意味がない。とりわけ、ブラジル戦では相手の守備への切り替えの速さに苦しめられていた。それを示すかのように、ボール奪取後の攻撃のパス本数を見ると、ブラジル戦では平均で2.8本しかつなげていなかった。しかし、イタリア戦では6.2本。選手同士が良い距離間にいたことで、攻撃に転じた際も素早くボールを回すことができていたといえる。その中心となっていたのが、日本の司令塔である遠藤だった。パス数はチームで2番目となる78本で成功率は89.7%(ブラジル戦は82.9%)という非常に高い数字を示していた。さらに、前述のピルロと同様にトラップの成功率を見ると100%と、パスを含めて彼がボールを失う場面はごくわずか。日本に良いリズムをもたらしていたといえる。
それにより恩恵を受けたのが日本の「10番」だった。香川のプレーエリアを見ると、低調な出来に終始したブラジル戦と比較をして「敵陣」の左サイドが大幅に増加。相手のライン間のギャップでボールを受けてはさばくということを、何度も行う場面を目にしたはずだ。その香川に最もパスを出していたのが遠藤で、香川が最もパスを出していた相手も遠藤であった。また、長友から香川へつながったパスはブラジル戦ではわずか1本だけであったがイタリア戦では15本と、チームの最大の武器である左サイドが活性化。加えて、味方との連係が良くなったことで、自身がゴール前に顔を出す機会は増え、決定的なプレーを見せていた。
セットプレーへの対応、自陣ペナルティエリアでの守備など、ミスから失点をして敗れたことは否めない。これらをなくさなければ、本大会での上位進出は夢物語に終わってしまうはずだ。とはいえ、攻撃が活性化して香川らが躍動した裏には、狙い通りの守備があったということを忘れてはいけないだろう。