HOME » 【J1昇格プレーオフ決勝】 〜チームをJ1に導くキーパーソンは?
J1昇格プレーオフ準決勝は、大分が京都に4-0、千葉が横浜FCに4-0と引き分けアドバンテージのないアウェイチームが勝利した。両方の試合でこれだけの大差がつくことは予想できなかったが、この準決勝で勢いに乗った両チームが11/23の国立競技場の舞台に進み、千葉が勝利か引き分け以上、大分が勝利でJ1昇格といった条件となった。
引き分けでもよいという意識がチームにどういう影響を与えるのかは分からないが、お互い勝たなければならない試合に勝ち進んできたことを考えると両チームとも得点を取って勝ちにいくというメンタルで望んでくるのではないかと予想される。
本コラムでは、過去の大分と千葉の対戦成績や最近5試合のデータから、両チームを昇格に導くキーパーソンが誰なのかを考察してみた。
【①過去の対戦成績:千葉が圧倒的勝率】
過去の両者の対戦成績を見ると、千葉が15勝、大分が2勝、3つの引き分けと千葉が圧倒的に勝ち越している。千葉は2009年に初めて負けるまで大分には負けがないぐらい相性がよかったようだ。しかし、今年の10/14の試合は千葉が谷澤のゴールで先制したものの森島の2ゴールで逆転し、千葉から2勝目を奪った。
千葉は大分に対してやりやすいイメージはありつつ、大分に負けたことで自動昇格が厳しくなったことは鮮明に覚えているだろう。千葉のメンタル的には大分にしっかりリベンジをして昇格を手にしたいというモチベーションで試合に臨んでくることが予想される。一方、大分も苦手意識はありながら10/14の試合に勝ったことで、次もいけるというイメージがあるだろう。
【②今シーズンの得点パターン】
続いて、今年一年間の得点パターンを見ると、大分はクロスが22.0%、千葉もクロスが34.4%とサイド攻撃からの得点パターンが多い。大分は3-5-2でサイドの攻撃からFW森島・木島に合わせる攻撃、千葉も4-2-3-1でサイドハーフ、サイドバックからワントップの藤田に合わせる攻撃を得意としている。お互いのチームがサイドのスペースをどのように作り、そのスペースを使っていくかが決勝戦での見どころの一つとなるだろう。
過去の直接対決におけるゴールランキング
【③過去の直接対決でゴールを決めた選手】
⇒森島3ゴール、谷澤4ゴール、佐藤勇3ゴール、深井3ゴール
次に、お互いの直接対決でゴールを決めたことがある選手は、この試合でいいイメージで入れることが予想される。上の図は過去大分と千葉の直接対決において2得点以上あげている現役選手をリストアップしてみた。黄色いハッチングをしてあるのは現所属選手である。
まず大分は森島が3ゴールで、先日の直接対決でも2ゴールを挙げており、千葉にとって最も警戒したい人物だ。一方千葉は直接対決で先制ゴールを挙げた谷澤が合計4ゴールを挙げており、佐藤勇も3ゴール、深井も3ゴール上げている。ジェフの方が、大分戦で得点しやすいというイメージを持っている選手が多そうだ。
【④直接対決後にゴールを挙げている選手】
⇒森島8ゴール、木島・チェジョンハン1ゴール
⇒藤田4ゴール、米倉・佐藤勇2ゴール
最近ゴールを上げている選手もこの決勝でも好調をキープしているだろう。上の図は両者の直接対決を含む残り5試合で得点を上げている選手をピックアップしてみた。
大分は森島が8ゴールをマーク。特に京都との直接対決ではFK、サイドからクロスを合わせる、PK、1対1から冷静なゴールとバラエティに富んだパターンで4ゴールをマークしており、最も波に乗っている選手だ。千葉は改めてこの森島をどのように抑えていくかがポイントだろう。
一方千葉は、藤田が4ゴール。昇格プレーオフで豪快なシュートを決めており、今期絶好調といえるだろう。また湘南戦で今季初ゴールを上げ、貴重な勝ち点を拾った佐藤勇人も2得点。また湘南戦からレギュラーに定着した米倉も2得点。米倉も決勝プレーオフで貴重な追加点を上げており、この二人が要注意人物だ。
【⑤好調選手にパスを供給している選手】
最後に、好調選手のゴールやシュートのチャンスに絡んでいる選手も注目してみたい。上の表は最終的にゴールやシュートにつながったプレイをした選手(受け手)がその5プレイ以内に絡んだ選手の回数のランキングである。調子のよい選手に絡んだ出し手の上位に挙がってくる選手が決定的なチャンスに絡みやすい選手と見ることができるだろう。
まず千葉は藤田や米倉にパスを供給している兵働が最も多く15回。藤田や米倉のシュートチャンスは兵働が作っていることがこの数字から推測される。大分はトップ下の丸谷・永芳、ボランチの宮沢が兵働をどのようにケアしていくかが見どころとなるだろう。またゴールに絡んでいる藤田が9回、米倉も8回とチャンスメークに絡んでいるので、どこからでもチャンスを作り、点が取れることを示している。バリエーションの富んだ攻撃に対して、大分がどのように対策を練ってくるか注目だ。
一方大分は森島を中心に見ていくと、右サイドに位置する三平が9回と最も多く、次いで左サイドのチェジョンハンが5回。素早いカウンターでサイドから森島に上がるクロスを千葉ディフェンダー陣がうまく対応できるか。前回の対戦時の2失点目はサイドからのクロスから見事にやられているため、2度目の失敗は許されない。また丸谷・永芳から森島へのパス供給も多く、今シーズン終盤にレギュラーを勝ち取った2人の出来も大分の運命を左右するだろう。
様々な視点で両チームの攻撃のキーパーソンを探ってみたが、注目すべきは好調の選手とパスを供給している選手の連携を分断し、お互いの得意なスタイルであるサイド攻撃の回数をどれだけ増やすことができるか。
「日本一残酷な、歓喜の一戦」は本当に素晴らしい試合になることを期待したい。
text by 木下陽介
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2024-11-04 15:10
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