HOME » 【大混戦J2昇格争い】 〜昇格をつかむチームは?〜
J2も残すところあと6試合。今年はJ1昇格プレイオフ、JFLとの入れ替え戦と大会方式の変更に伴い、例年以上の大混戦となっている。特にJFLの入れ替え戦の影響で今年は下位チームも真剣に試合に臨んでいるため、岐阜、鳥取、富山、町田を始め、下位チームが上位食いをしている試合も多く、スリリングな試合が多いのが特長だ。
今回のコラムは大混戦のJ1昇格昇格争いを占う上で、現状上位チームが低迷している要因や改善ポイント、残り6試合の展望を考察していきたい。
まず、左図は26節から35節の10試合の勝ち点推移を表している。現在36節まで終了しているが、台風の影響で4チームが未消化なので、35節終了時点の現在の好調チーム、不調チームを見てみた。
過去10試合の勝ち点推移を見ていると、甲府はダントツの一位で独走態勢に入った。自動昇格はほぼ間違いないと言っていいだろう。続いて北九州が第2位。35節の甲府に負けるまで8戦負けなしで、残り6試合で最も注意すべきチームだ。3位は横浜FC。山口監督に変更後しっかり再生し、現在7位と自動昇格も狙える位置にまで付けてきている。同じく3位の松本もこの10試合での負けは一度だけで、残り試合における要注意チームと言えそうだ。
一方、苦戦しているのは中盤まで好調をキープしていたチームだ。まず26節終了後は2位と自動昇格ラインにいた千葉は、その後の10試合でわずか勝ち点9しかあげられておらず、主力だった藤田・山口智・岡本の怪我による欠場が響いている。また東京Vも26節終了時点で3位につけていたが、8月に5試合勝ちなしで川勝監督が辞任する事態となった。山形も8月に入ってから町田と愛媛にしか勝っておらず、9月に入ってからは守備が崩壊して勝ちがない。大分もライバルチームに勝ちは拾っているが、取りこぼしが多く10ポイントの上積みのみ。湘南も15ポイント稼いではいるが、最近は3連敗とブレーキ。チーム得点王の馬場、攻守の要だったハングギョンの骨折による長期離脱が響き、自動昇格争いも大混戦の状態となっている。京都は勝ち点を稼いではいるが、8月から9月にかけて4連敗を喫しており、決して安定しているとは言えない。
26節まで上位にいたチームが低迷し、下位が好調な理由は何故か。上の図は26節から35節の最近10試合における1試合平均のゴール数、シュートCBP、攻撃CBP、守備CBPと35節トータルにおける1試合平均との差を見ていくことで、7月末までと最近2ヶ月のチーム状況の変化について考察してみた。
【上位チーム低迷の要因①:決定力不足の低下】
まず、湘南〜栃木までの上位チーム共通に言えることは、攻撃CBPはそれなりにベースをキープしつつも、一試合平均のゴール数、シュートCBPがどのチームも低下しているのが特長だ。最も得点数が多い東京Vは一試合平均得点数が最近10試合は1点にまで低下しており、-063ポイントも下がっている。続いて低いのは千葉。藤田の欠場によりエースストライカーを失い、深刻な決定力不足が課題だ。それ以外も横浜FC、栃木、湘南、山形、大分と軒並み得点力が低下しており、残り6試合はいかに得点を取れるかが昇格に向けて大きな鍵となってくるだろう。
一方、最も1試合あたりゴール数が上昇したチームは松本。35節は7点とって対象しており、最も注意が必要なチームかもしれない。ついで多いのは北九州で端戸をはじめとしたミドルシュートがしっかりゴールに結びついた結果、シュートCBPは最も高い。
【上位チーム低迷の要因②:守備力の低下】
また守備面でのほころびが生まれているのももうひとつの特長だ。最も守備CBPが低下した山形は9月以降平均2失点以上しており、守備改善が急務。千葉も山口智の怪我後リーグ最少失点を明け渡すこととなり、2試合連続ロスタイムに失点、不安定な試合運びが続いている。京都はチームスタイルであるパスサッカーを貫いてはいるが、カウンターを狙われることも多く、スタイルを貫き得点を取り続けることができるかが今後の鍵となるだろう。大分も8月まで12試合あった無失点試合が8月以降2試合しかない。どのチームも無失点試合があまりなく、残り6試合で守備面を立て直すことができるかどうかも昇格に向けた鍵となるだろう。
【上位チーム低迷の要因③:チームスタイルの微妙な変化】
J2争いで低迷していく要因の一つとしてあげられるのがチームスタイルの変更。序盤に積み上げたチームの強みを活かして戦っていないチームをチェックするために、35試合全体での1試合平均(=1年間の攻撃スタイルを表す)と最近10試合における1試合平均(=最近の攻撃スタイルを表す)の二つの差(=攻撃スタイルのズレ)を見ることで、チームの改善ポイントを見ていきたい。
まず甲府はドリブル&クロス主体での個人能力を生かしたサッカースタイル。途中で加入したフェルナンジーニョの影響でドリブルCBPが向上し、上積みとなっている。フェルナンジーニョは加入後5アシストで、ダヴィを再活性化させたことが、独走態勢を作る要因となっている。
湘南もクロス、ドリブルを主体とした走るサッカーだったが、パス・クロス・ドリブル全ての項目で低下。守備CBPが上昇したことを考えると、昇格に向けて守備面での意識を強めたことが伺える。しかし、ここ3試合は大量失点しており、守備を立て直すのか、攻撃面にてこを入れるのか、エース不在の中、判断のタイミングに来ていると言える。
千葉はパスとクロス主体でのサッカーだったが、谷澤の加入により、ドリブルCBPが上昇、序盤にスタメンだった両サイドバックも顔ぶれが変わっており、クロスCBPが低下している。最も得点パターンが多かったクロスの低下はチームコンセプトに最もブレが生じているチームなのかもしれない。
京都・東京V・横浜FCはパスサッカー、山形・大分はクロスを主体としたカウンターであることはそこまで変わりはなく、スタイルが変化したとは言い難い。これらのチームは残り6試合でスタイルを貫き通せるかが今後の注目ポイントではないか。
【ラスト6節:自動昇格の栄光をつかむチームは京都?】
とはいえ、泣いても笑ってもあと6試合。上の図は残り6節の対戦カードと、対戦相手の最近10試合の勝ち点数から、対戦カード上有利なチーム、不利なチームを考察してみた。
残り6試合で最も対戦相手の合計勝ち点数が少ないチームは湘南。ただ湘南は、数字上直接対決で自動昇格が決まりそうなタイミングで甲府との対決、そのあとの千葉との直接対決、残り3試合は降格争いのチームを残しているだけに、どの試合も苦しい戦いになっていくだろう。京都は1試合勝ち点が少ない上に直接対決も少ない。現在好調チームとの対決を残している。しかし、降格争いの富山・岐阜との戦い、好調北九州で連勝できれば最も自動昇格に近いチームかもしれない。
千葉は大分、湘南、山形の直接対決が最大の山場となるだろう。湘南との直接対決の前に連勝し、直接湘南をたたけば逆転自動昇格も見えてくるが、ここで3連敗してしまうと、プレイオフにも残れない可能性も出てくるだろう。
プレイオフ争いも目を離せない。東京Vは上位との直接対決が一つもないので、自分との戦いとなっていくと思うが、天王山は41節の横浜FCとの直接対決。ここで勝った方がプレイオフに残れるのかもしれない。横浜FC、山形、栃木はどこも2試合ずつ上位との戦い、好調北九州との戦いを残しておりここでの勝敗で6位の椅子に座れるのかもしれない。しかし、山形・栃木は残り試合が好調のチームを残しているため、決して楽観的ではなさそうだ。
プレイオフ、JFL降格制度で、より厳しい試合が増えた今年のJ2。最後に自動昇格するチームはどこなのか、そして国立競技場でラストの枠をつかむことができるのはどのチームなのか。最終節までまったく目が離せない。
text by 木下陽介
2024-11-06 14:25
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