ロンドン五輪の男子サッカーは予選リーグを終え、日本は2勝1分けで首位通過を果たした。決勝トーナメント初戦で相対するのはエジプトだ。
スペイン、モロッコと立て続けに勝利を収め、1試合を残して決勝トーナメントへの進出を決めたため、関塚隆監督はホンジュラス戦でスターティングメンバーを大幅に変更した。それには、出場機会のなかった選手に試合勘をつけさせるため、過密日程による主力の疲労回復のため、決勝トーナメント以降に起こり得る様々なアクシデントに備えるためなど、多様な要因もあっての起用だっただろう。
そこで今回は、この試合で初めてスタメンに名を連ねたプレーヤーに焦点を当て、彼らの活躍ぶりと課題を同ポジションの「ライバル」と比較し、決勝トーナメントで『切り札』となり得る5人を分析する。
まずは彼ら5人の配置を確認するために、スペイン・モロッコ戦とホンジュラス戦のプレー平均位置をご紹介する。
・杉本健勇(C大阪)
1トップに入った杉本は、スピードを武器とする永井謙佑(名古屋)とはタイプが異なる。体格を生かしたポストプレーなど、前線でタメを作れる選手だ。しかし、この試合では思うように時間を作れず、トラップを狙われて奪われるシーンが散見した。
また、パス1本あたりのCBPは0.02で永井の半数となってしまうなど、効果的なパスで起点となれなかったことは今後の課題となっただろう。
・宇佐美貴史(ホッフェンハイム・ドイツ)&齋藤学(横浜FM)
スタートは右サイドに入った宇佐美だが、試合中は選手交代の影響でトップ下もこなしていた。左サイドの齋藤とともに、これらのポジションで求められることは様々あるが、前線でよりボールに絡むこと、ボールを持ったときに積極的に仕掛けることはその一つだろう。
宇佐美はアタッキングサードでのプレー回数(90分あたり)が清武弘嗣(1.FCニュルンベルク・ドイツ)とほぼ同数で、他の2列目の選手と比べても遜色ない数値を残した(上記図)。一方で、二人ともドリブルを積極的に仕掛けたもののボールを失ってしまうことが多く、1回あたりのCBPが示すように効果的なドリブルができなかったことは課題か(右図)。
・山村和也(鹿島)&村松大輔(清水)
ボランチで出場した山村は、扇原貴宏(C大阪)の役割を託された。具体的には、ビルドアップ時に山口螢(C大阪)が引き気味にポジションを取ってシンプルにボールをさばく一方で前線へのパスの供給源となることや、中盤との連係から相手のボールを奪い取ることなどである。
村松は右サイドバックとして出場し、守備面で貢献したことはこのデータからも見て取れる(上記図)。課題を挙げるならば、バックパスの割合が高かったため、縦パスの意識を高めることか(右図)。
すべてのデータを掲載できないのは残念だが、『切り札』のストロングポイントや課題を少しでもご紹介できただろうか。ホンジュラス戦で力を発揮できなかったメンバーも、この試合で見えた課題を修正してエジプト戦に備えてくれるはずだ。控えメンバーも含めた18人で、ぜひともベスト4進出を決めてほしい。
Text by 杉崎 健