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ペナルティエリア攻略におけるW杯のトレンド
2018.7.6

6月14日の深夜に開幕したFIFAワールドカップは順調に試合をこなし、世界一への権利を持つチームは8つに絞られた。この世界最高峰の戦いからはどのようなデータが生まれているのか。今回はペナルティエリア進入に注目して2010年、2014年のW杯におけるラウンド16終了時点のデータと比較しつつ検証してみよう。

ペナルティエリアといえば今大会はVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の導入も影響し、ペナルティキックの数が増加している点についてはもはや数値に表す必要もないだろう。これに加え、オウンゴールも過去より多い大会となっているが、これらを含めてペナルティエリアで生まれた得点数は下図の通りとなっている。

ペナルティエリア内で生まれた得点

前回大会よりは若干減っているものの、PKの獲得やオウンゴールの誘発も含め、多くのゴールを奪うためにはやはりペナルティエリアでのアクションがカギを握る。そのペナルティエリアをどのように奪うのか。オープンプレー攻撃時のペナルティエリアの進入先をまとめると下図のような傾向が表れた。

PA進入先

ペナルティエリアを中央とサイドに分け、90分平均回数と割合を計算すると、2010年大会から2014年にかけての変動が著しく、今大会もその流れに沿ってサイド(黄色のエリア)への進入が増加。中央に比べれば進入する難易度が低いこともあるが、同エリアは「ニアゾーン」とも呼ばれここ10年で重要性が増したエリアの1つであり、意図的にこのエリアへボールを運ぼうとしていることが分かる。

PA内サイド進入時のシュート率

そのペナルティエリア内のサイドに進入できた際に、3プレー以内にシュートを放った割合がこちら。
シュート率、そしてそのシュートが枠内へ向かった割合ともに減少傾向にある。なぜこのような変化が起きたのか、別の角度から探ってみよう。

PA内サイド進入比率

ペナルティエリア進入のサイド比率をチーム単位で散布図にしたのが上の図だ。各大会の右側にベスト8に残ったチーム、左側にグループステージもしくはラウンド16で敗退したチームのデータを載せた。大会全体の平均では上述の通り64%→71.7%→73.7%と変化していたが、ベスト8と他のチームでは散らばり方が異なる。ベスト8のチームの方がサイド比率は高い傾向だったが、今大会はラウンド16までに敗退したチームの一部がベスト8のチームを上回るようになった。

PA内サイド進入の比較

ベスト8と敗退チームで10%もあったサイド比率の差分は4%足らずに減少。シュート率とシュートの枠内率は差分に大きな変化はないものの、数値自体がお互い下落している。チームに関わらずこのエリアを狙うことが通例と化したことで守備側も対策を練るようになり、シュートへの備えが生まれたのだろう。エリアに至るまでの時間も長くなり、この攻撃における優位性が前回大会より下がることとなった。

前回大会のファイナリストでありながら早々に大会から去ったドイツとアルゼンチンも、このデータの変化は特徴的だ。ドイツは前回大会とほぼ同じ傾向でありながらシュートの枠内率のみ大きく下降。「決定力不足」という言葉で終わらせるのは簡単だが、世界王者であっても同じ戦い方では勝ち上がれないというところにW杯の難しさを感じさせられる。

一方のアルゼンチンは、すべての値において異変が生じていた。相手の堅い守備を攻略するのに時間を要しペナルティエリアへの進入タイミングが遅くなったのも特徴的だ。特に右サイド攻撃に問題があり、ペナルティエリア内の右サイドからのクロス計7本は味方に渡ることなく成功率0%を記録している。

このように近年の傾向が終わり、新しいサイクルが生まれようとしている今大会において、残った8チームはどのような戦いを見せてくれるのか。そして、敗れ去ったチームはこれらを糧にどういった研究を行い、今後のプレーに反映させるのか。フィールドに立てる者はもちろん、立てない者にとっても重要な試合がいよいよ始まる。

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